動脈瘤の治療>>
動脈瘤とは?
- 動脈は酸素を多く含んだ血液を、脳や肝臓といった臓器、筋肉や皮膚といった組織に送る役割をしています。それはまるで全身にはりめぐらされた道路のように体のすみずみまでいきわたっています。動脈瘤とはその動脈が風船のように膨らんでしまうことを言いますが、大きい動脈から小さい動脈まで瘤ができる可能性があります。
- いったん膨らんだ動脈は薬などで縮む可能性はなく、血圧を十分コントロールしておかないとますます大きくなってしまいます。動脈瘤は生じる場所や形、血管壁の状態や原因によって以下のようにいくつかに分類されています。
- A. 生じる場所による分類
- 1. 胸部大動脈瘤・・・横隔膜から上の胸の大動脈にできる。
- 2. 腹部大動脈瘤・・・横隔膜から下の腹の大動脈にできる。
- 3. 内臓器動脈瘤・・・肝臓、脾臓、腎臓などに向かう動脈にできる。
- 4. 末梢動脈瘤・・・手や足の動脈にできる。
- 5. 脳動脈瘤・・・頭の中の動脈にできる。
- 6. 冠動脈瘤・・・心臓を養う動脈にできる。
- B. 形による分類
- 1. 紡錘状動脈瘤・・・中年ぶとりの様に胸や下半身が細く、真ん中が全体に大きくなっている。
- 2. 嚢状動脈瘤・・・妊婦さんのように、一部分が飛び出している。
- C. 血管壁の状態による分類
- 1. 真性動脈瘤・・・血管壁を維持したまま大きくなっている。
- 2. 解離性動脈瘤・・・血管壁が2つ以上に割れて大きくなっている。
- 3. 仮性動脈瘤・・・動脈出血後の血栓が、内部だけ溶け残りの壁が大きくなっている。手術や検査後に起こることが多い。
- D. 原因による分類
- 1. 動脈硬化性・・・血管壁の動脈硬化によって大きくなっているもので、原因として最も多い。
- 2. 炎症性・・・自己免疫疾患などを背景に、血管壁の炎症によって大きくなっている。
- 3. 感染性・・・付着した細菌により血管壁が破壊されて大きくなっている。
どんなことが怖い?
- 動脈瘤を持っていることで最も恐ろしい出来事は破裂です。膨み過ぎた風船が破裂するように、動脈の壁が割れて血液が外に出てしまいます。胸部や腹部の大動脈瘤では、一気に血液が外に出てしまえば意識がなくなり心臓も呼吸も止まってしまいますが、じわじわと漏れ出る場合は胸や背中の痛み、腹や腰の痛み、気分が悪いなどの症状が出ます。
- 次に怖いことは動脈解離や血栓塞栓症です。解離は血管壁に血液が流入することで起こりますが、拡張した動脈には解離が生じやすくなっています。解離は大動脈弁閉鎖不全、心筋梗塞、脳梗塞、対麻痺の原因となったり、腹部臓器や手足の虚血の原因となったりします。また、拡張した動脈の内側には血栓ができていることも多く、その血栓のかけらが何かの拍子に飛んで血管を詰めてしまうこともあります。これは血栓塞栓症と呼ばれ、詰まった血管の先には血液が通わず臓器や組織に重大な障害が起こることになります。
破裂しやすい動脈瘤ってあるの?
- 動脈瘤はその形や大きさによって破裂しやすさが異なります。嚢状の動脈瘤は小さくても破裂しやすいことが知られており、発見されれば治療の対象になります。一方紡錘状の動脈瘤は大きさによって治療方針を決める場合が多く、一般に最大径が胸部では6cm以上、腹部では5cm以上、その他の動脈で正常径の2倍以上大きくなっている場合には治療を勧めています。しかしながら、解離や血栓塞栓症を起こすような動脈瘤では大きさによらず治療を勧めるケースもあります。
©2006 Department of Cardiovascular Surgery, Graduate School of Medical Sciences, Kumamoto University