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光学医療診療部 肝疾患センター
■ ごあいさつ
佐々木教授


 私が大学を卒業してから消化器病の診療や研究に携わって35年になりますが、この間に消化器病の疾病構造や診療内容が大きく様変わりしてきたことを、目の当たりにしてきました。その理由の一つとして、生活習慣・食生活の変化が挙げられます。逆流性食道炎、機能性デイスペプシア、過敏性大腸などに代表される機能性疾患、生活習慣病と位置づけられる脂肪肝やNASH(非アルコール性脂肪性肝炎)、潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患、膵臓癌、食道癌、大腸癌などの悪性腫瘍など、それらの成因に大きく生活習慣・食生活が関与しており、我々も臨床研究からその一端を明らかにしてまいりました。
 一方、基礎研究の成果として病原微生物であるピロリ菌やC型肝炎ウイルスの同定と、それに基づく診断法や治療法の開発が、消化器疾患診療に大きなインパクトを与えたことは言うまでもありません。加えて近年では、宿主の遺伝子解析による治療反応性の予測、あるいはウイルスの遺伝子解析に基づく治療抵抗性の予測も可能な時代となっております。
 我々はこのような最先端の知見や技術を積極的に臨床に導入することで、科学的な根拠に基づいた”より高いレベル“の診療を目指しています。
 他方、医用工学の発達も消化器診療を大きく様変わりさせたといっても過言ではありません。早期の食道癌、胃癌、大腸癌の内視鏡的治療、それを支える内視鏡画像診断の進歩、超音波内視鏡を用いた消化器癌の深達度評価や膵臓癌の病理診断、ラジオ波による早期肝癌の根治的な治療など、私が医師の道を歩み始めた1980年代では想像もつかなかった進歩です。教室や同門の若手、中堅の医師たちが、これらの診断・治療法の発展にいち早く興味を持ち、最先端の技術や知見を国内留学の形で取得し、その後熊本に戻り、後輩に伝搬すると共に、県内の医療レベルの向上に貢献するという流れが定着しております。
 このように消化器病の診断能や治療成績が向上していることは確かです。しかしながら病態のさらなる解明や治療成績のより一層の向上が望まれています。
 そこで教室では大学院生やその指導者が中心となって、病態への免疫の関与の解析や免疫学的な治療法の開発、エピジェネテイクスによる消化器疾患の病態解明と臨床への展開、肝癌、消化器癌の発癌進展の分子機構の解析などの基礎的なテーマを、本学の基礎講座、あるいは他大学との共同研究での形で進めております。加えて、関連施設や同門会の全面的な協力のもとに、多数の臨床データを集積しそれから情報を国内外に発信するべく社会人大学院生が奮闘しております。
 熊本大学大学院消化器内科学は2003年に生まれた教室です。さしずめ中学生ぐらいの年齢の教室です。これからも、若手、中堅医師、教官層、大学院生が一体となり、教育、診療、研究というバランスを取りつつ、国内外に情報発信ができるような教室として成長していきたいと考えております。
 皆様のご理解とさらなるご支援をお願い申し上げます。