熊本大学 - Kumamoto University
熊本大学大学院生命科学研究部 代謝内科学分野
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ご挨拶

 糖尿病は現在、日本の約7%、890万人が罹患する国民病であり、糖尿病やその合併症である糖尿病網膜症、腎症、神経障害、心筋梗塞、脳血管障害は患者さんのQOLを大きく損なうのみならず、医療経済の上からも大きな問題となっています。このような糖尿病患者の急増の原因として、生活様式の欧米化が深く関与しています。

 私たち糖尿病・代謝・内分泌内科では、日本人の2型糖尿病患者に対し厳格なインスリン治療を行うことで合併症発症を抑制し得ること(Kumamoto Study)を報告しており、このことから一旦発症した糖尿病患者には、早期に厳格な血糖コントロールを行うことで合併症の発症を抑える、いわゆる2次予防が重要であると言えます。しかし同時に、糖尿病患者をこれ以上増やさないようにする、いわゆる糖尿病発症に対する一次予防の徹底も重要な課題であると考えます。この糖尿病の一次予防には、医療従事者のみならず一般の皆様にもいわゆる生活習慣病のことをよりよく理解していただくことが大事でしょう。近年、2型糖尿病の発症には内臓脂肪蓄積型肥満によるインスリン抵抗性の増加が影響することが世界的にも注目されています。生活様式の欧米化により日本人でもこの内臓脂肪蓄積型肥満を伴ったいわゆる“メタボリックシンドローム”から糖尿病へと進行する患者が急増していることも事実です。一方で日本人は欧米と違い、もともと遺伝的にインスリン分泌能が低下している方も多く、個々の病態に合わせた糖尿病発症予防法の選択が必要であると考えます。肥満やエネルギー消費、あるいはインスリン作用や分泌に関与するような遺伝子、あるいは蛋白の詳細な解析によって、将来どういったタイプの糖尿病になりやすいかをある程度判定できるようになれば、効率的に糖尿病の発症を予防することができるかもしれません。

 当科では、メタボリックシンドローム予備群の状態で生活習慣に介入することで、メタボリックシンドロームや生活習慣病の発症を抑えることを示し(田原坂スタディ)、健診データの有効活用と生活習慣への積極的な介入の重要性を証明しました。一方で、糖尿病に長く罹患している患者では、自覚症状が無くても虚血性心疾患が存在する可能性が高いこと、その診断に頸動脈エコー検査や心臓CT検査が有用であることを示し、診療に活用しています。手術が必要な糖尿病網膜症の治療には、眼科と共同で周術期の管理を行っております。

また、高血糖による酸化ストレスが糖尿病合併症の誘因の1つであると考えられており、酸化ストレス発生を抑制しうる治療法の開発を推進しています。さらに、ベッドサイド型人工膵島を臨床応用し、糖尿病患者の手術中の血糖管理や精密なインスリン抵抗性の定量に使用しています。頻回のインスリン注射でも血糖管理が困難な患者には、細かなインスリン注入プログラムが設定可能なインスリン注入ポンプを用いた治療も実施しており、これを発展させた携帯型人工膵島の開発にも取り組んでおります。

 内分泌領域では、甲状腺疾患の正確な診断と治療、バセドー眼症の内科的治療、副腎偶発種の質的診断、原発性アルドステロン症の副腎静脈サンプリングによる部位診断、間脳・下垂体疾患の診断と治療、尿崩症の診断と治療など、広く内分泌領域の診療を、色々な診療科と共同で推進しております。

 また、高度の肥満症や遺伝性の脂質異常症、動脈硬化症、高尿酸血症(痛風)などの診断と治療にも力を入れております。

 今後とも患者さんのご紹介はもとより先生方のご協力をいただき、代謝内分泌疾患の治療と予防に全力を尽くしていきたいと思っています。皆様方の、これまで以上のご指導・ご鞭撻を承りますことをお願い申し上げます。