国立大学法人
熊本大学医学部附属病院
脳神経外科
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スタッフ

てんかんの外科

担当: 森岡基浩

てんかんとは
”てんかん”という病名には抵抗を感じる方も多いと思います。しかし医学的には一 回の発作をけいれん発作と呼び、このけいれん発作が繰り返し起こる患者さんすべてにてんかんという病名がつけられます。
けいれん発作は脳の中にあるてんかんの”焦点”から起こります。焦点にはほとんど の場合神経細胞の損傷・異常があり、その部位からは正常時にも時々異常に高い電気 信号(電流)が発せられておりこれが脳全体に広がったときにけいれん発作となりま す。従いましててんかんの原因には脳腫瘍によるもの、脳挫傷(事故で脳に少し傷が できてしまったもの)によるものなどがありますが、脳自体に画像(CT, MRI 等の検 査)の上で異常がない人にもてんかんはみられます。またやむを得ず脳を切る手術を 行われた後にはどんなに良い手術を行っていてもてんかんとなることがあります。


てんかんの治療 - お薬による治療
てんかんの治療は脳腫瘍の患者さんを除いて抗けいれん薬を毎日服用することから始 まります。けいれん発作を防止するにはお薬が常に一定量以上血液の中に流れている ことが必要です。またけいれんを予防するために必要な血液中のお薬の量(血中濃度) には個人差があり発作を防止するためにはたくさんのお薬を服用しなければならない 患者さんもいらっしゃいます。てんかんのお薬による治療とは、てんかんの原因を治 していると言うよりも電流が広がって起こるけいれん発作を予防しているという意味 が強いと考えられます。しかしがっかりする必要はありません。なぜならてんかんの 原因が治らなくても薬を服用して発作が全く起こらなければ健康な人と同じであるか らです。しかしながら発作がないからと言って自分勝手に薬をやめたり、量を減らし たりするとけいれん発作を起こして病院へ運ばれることになります。お薬のことは必 ず医師の指示に従って下さい。

熊本大学における治療の特徴


てんかんの治療 - 手術による治療
抗けいれん薬を調整してけいれん発作が起きないように治療していっても、どうして もけいれん発作を止めることができない場合があります。こういった患者さんは難治 性てんかんと診断され手術による治療が検討されます。 てんかんの手術の目的は焦点を取り除くことにあります。焦点を取り除く手術が可能 な場合とは、

1)どこが焦点かはっきりわかっていること、
2)焦点が1(ないし2)カ所であること、
3)焦点を取り除いても症状がでない場所であること

などの条件が揃うことが必要です。また焦点は必ずしも画像上異常な部位であるとは 限りません。これらのことから手術を考慮する場合にはまず焦点を明らかにすること から始めます。

焦点を明らかにする検査のうちでもっとも重要なものはけいれん発作直前の脳波です。 入院後お薬を減量・中止し、頭に電極をつけ一日中脳波を記録しながらけいれん発作 を待ちます。この検査を脳波持続モニタリングと言います。この検査によりけいれん 発作が起きる時の異常脳波がどこから始まるかはっきりし、さらにいつもそこからけ いれん発作が起きることが明らかになれば(焦点が明らかになれば)手術が可能です。 しかしながらこの時点で上記の1)−3)の条件が満足されなければ残念ながら手術 の適応外と判断されることもあります。手術の適応外とは”痛い思いをして手術をし ても患者さんのけいれん発作が全く変わらない”ということです。焦点を切除して発 作がほとんど起こらなくなる可能性は、側頭葉てんかんで90%ぐらい、その他の場 所に焦点がある場合では60−80%ぐらいと言われています。



焦点を取り除く手術が適応外と判断されても全身けいれんが頻発してしばしば転倒す るような患者さんには左右の大脳半球の連絡を遮断する手術により転倒するような大 きな発作を防ぐ方法もあります。この方法では残念ながら発作を完全に止める効果は 期待しにくいのですがひどい発作を押さえる効果があります。
このようにてんかんという病気の中には十分な検査、検討を行っていけば手術により 良くなる場合があります。こういった検査は非常に手間と人手が必要ですので熊本県 では熊本大学附属病院脳神経外科でしか行われていません。希望されるすべての方に 手術を行えるとは限りませんが、お薬だけでは発作が止まらずあきらめていた方はご 相談下さい。