センターについて

センター長 ごあいさつ

教授 近藤 英治
熊本大学大学院生命科学研究部 産婦人科学講座 教授 近藤 英治

 最新のがん統計予測では、年間の悪性腫瘍罹患患者数は100万例に達します。そのうち約2%は生殖年齢またはそれ以下の患者さんであり、手術療法、放射線療法、がん化学療法、骨髄移植療法などにより、その完全寛解率は著しく向上しています。しかし、治療によりがんを克服したものの生殖機能を失った患者さんも多く、これまで、治療医、患者さんともに、治療が妊孕(にんよう)性(せい)(妊娠のしやすさ)に与える影響について大きな関心を払わなかったのがその一因と考えられます。これに対して最近では、将来の妊孕(にんよう)能(のう)(妊娠する能力)を考慮した治療法を考慮するとともに、進歩した生殖補助技術(ART:assisted reductive technology)を用いて、女性では卵子あるいは卵巣組織を、男性では精子をがん治療に先立って凍結保存しようとするがん・生殖医療(oncofertility)の考え方が広まりつつあります。

 熊本大学病院では、2016年4月に「生殖医療・がん連携センター」の名称で、がん治療医と生殖医療専門医の連携による妊孕性温存治療の普及を目的としたセンターを開設しました。がん・生殖医療を実践するにあたっては、医師のみならず看護師、胚培養士、心理士、薬剤師、そしてソーシャルワーカーなどからなる医療チームの存在が不可欠であり、大学病院を中心とした県内医療機関とのネットワークを構築し、実働を開始しています。

 がん・生殖医療治療の多くは産婦人科で行われますが、産婦人科教室は、1986年に倫理委員会の承認ののち、体外受精・胚移植、顕微授精、胚凍結などの生殖補助技術を臨床実施のみならず基礎的研究を含めて行ってきた歴史があります。

 センターの主な役割は、小児がん、子宮頸がん、乳がん、精巣がん、白血病に代表される生殖年齢あるいはそれ以下の年代に発生するがん患者さんに対する妊孕性温存治療(配偶子・胚凍結、卵巣組織凍結(現在準備中)など)に関するカウンセリング、適応のある症例に対する本院を含めたART実施施設の紹介と胚や配偶子(未受精卵子・精子)、卵巣組織などの凍結保存と長期管理を、本院の臨床各科を含む県下のがん診療拠点施設、ART実施施設と連携しながら行うことです。

 このホームページをご覧になって、ご相談になりたい方はがん相談支援センターを通してお申し込みください。緊急を要する場合でも速やかに対応させて頂きます。


センターの役割

 小児がん、子宮頸がん、乳がん、精巣がん、白血病に代表される若年がん患者さまに対し、妊孕性温存治療、受精卵温存、卵巣組織凍結に関するカウンセリング(がん・生殖医療相談)を行います。

 カウンセリング後、適応のある患者さまに本院を含めた、ART実施施設の紹介と胚や配偶子(未受精卵子・精子)、卵巣組織などの凍結保存と長期管理を本院と県下のがん診療拠点施設、ART実施施設、自治体(熊本県)と連携しながら行っていきます。2021年4月から国の事業として、妊孕性温存療法研究促進事業(公的助成事業)が開始され、基準を満たせば妊孕性温存治療の費用の助成が受けられます。


センターの業務

  1. がんと生殖医療に係る医療情報の提供に関すること。
  2. 熊本県内の専門医療機関等に係る情報の収集及び提供に関すること。
  3. 医療従事者及び地域住民等を対象にした研修会及び講演会の開催並びに相談支援に関すること。
  4. ART施設など専門医療機関等との協議に関すること。
  5. その他センターに関すること。