熊本大学小児科専門研修プログラム

1.プログラムの概要・特徴

 小児科医には、成長、発達の過程にある小児の診療を行うために、正常小児の成長・発達に関する知識が不可欠です。また、新生児期から思春期までの幅広い知識と、発達段階によって異なる疾患についての知識が必要です。さらに専門医研修においてはgeneral physician として必須となる疾患をもれなく経験し、疾患の知識を取得するのみならず、チーム医療を組織し、問題対応能力や安全管理能力を獲得し、家族への説明と同意を得る技能を身につける必要があります。

 本プログラムでは、「小児医療の水準向上・進歩発展を図り、小児の健康増進および福祉の充実 に寄与する優れた小児科専門医を育成する」ことを目的とし、一定の専門領域に偏ることなく、幅 広く研修することができます。専攻医は「小児科医は子どもの総合医である」という基本的姿勢に基づいて3年間の研修を行い、「子どもの総合診療医」、「育児・健康支援者」、「子どもの代弁者」、「学識・研究者」、「医療のプロフェッショナル」の5つの資質を備えた小児科専門医となることをめざしてください。

 専門研修は、3年間を通して以下の研修施設で専門医になるために必要な研修を行います。本プログラムにおける研修基幹施設は熊本大学医学部附属病院であり、関連施設である熊本赤十字病院、熊本市民病院と連携して専門医となる上で基礎となる小児の基本的な診療技能、小児保健、成長・発達、栄養、水分管理等について研修します。これらの各施設には小児科専門医が10名以上配置され、疾患分類としては代謝内分泌、遺伝、新生児、血液腫瘍、神経、腎・泌尿器、膠原病、循環器、感染症、消化器、呼吸器等の疾患をカバーしており、各々の疾患について担当医として診療に当たります。これらの施設には一般小児診療に加えてNICU、PICUといった集中治療ユニットが設置されており、指導医とともに新生児および小児の集中治療の研修を行います。次のステップとして、熊本県内外の連携施設もしくは関連施設において、小児科領域における一般診療(一次医療および二次医療)を中心とした研修を行います。研修基幹病院である熊本大学においては、3年間の研修期間のうち最低6ヶ月間の研修を行うことが必要となっていますが、その間には大学病院が行っている専門的な医療に加えて重症心身障がい児医療や乳幼児健診などの社会医療についても研修を行います。

 本プログラムでは、研修施設の充実も特徴です。熊本大学医学部附属病院は熊本県唯一の大学病院であり、高度な専門医療に対応しており、経験豊富な専門医が在籍しています。特に小児難病、小児慢性疾患、新生児救急疾患を受け入れる体制を有しており県外からの搬送も受け入れています。連携施設である熊本赤十字病院は日本有数のPICUを有しており、同じく連携施設である熊本市民病院はNICU及び小児循環器科が設置されており、各々の施設が専門性の高い医療を提供しています。研修予定のその他の各関連施設には3名以上の小児科医が配置されており一般診療に加え各施設の地域特性にあった診療内容の研修が可能です。このように本研修プログラムでは大学病院を中心に、小児科専門医取得に必要な全領域の診療が経験できる体制が整っており実績も十分です。更に、研修終了後も更なる専門領域の研修、大学院進学による研究、国内留学、海外留学などの進路が選択できる体制になっています。

2.専攻医の採用と修了

1) 受け入れ専攻医数 :本プログラムでの毎年の専攻医募集人数は、専攻医が3年間の十分な専門研修を行えるように配慮されています。本プログラムの指導医総数は40名(基幹施設 20名、連携施設 13名、関連施設 7名)であるが、整備基準で定めた過去3年間の小児 科専門医の育成実績(専門医試験合格者数の平均+5名程度以内)から11名を受け入れ人数とします。

受け入れ人数
11名

2) 採用:熊本大学小児科研修プログラム管理委員会は、専門研修プログラムを毎年4~5月に公表し、6~9月に説明会を実施し応募者を募集します。研修プログラムへの応募者は、9月30日までに、小児科医局 pediat@kumamoto-u.ac.jp (郵送でも可)に所定の「小児科専攻医採用申込書」を提出してください。原則として10月までに書類選考および面接を行い、専門研修プログラム管理委員会による審査のうえ採否を決定します。採否は文書で本人に通知します。採用時期は11月30日(全領域で統一)です。

3) 研修開始届:研修を開始した専攻医は、各年度の5月31日までに以下の専攻医氏名報告書を、熊本大学小児科専門研修プログラム管理委員会(pediat@kumamoto-u.ac.jp) に提出してください。専攻医氏名報告書:医籍登録番号・初期研修修了証・専攻医の研修開始年度、専攻医履歴書(様式 15-3号)

4) 修了:毎年1回、研修管理委員会で各専攻医の研修の進捗状況、能力の修得状況を評価し、専門研修3年修了時に、小児科専門医の到達目標にしたがって達成度の総括的評価を行い修了判定を行います。修了判定は、専門研修プログラム管理委員会の評価 に基づきプログラム統括責任者が行います。「妊娠・出産、産前後に伴う研修期間の休止」、「疾病での休止」、「短時間雇用形態での研修」、「専門研修プログラムを移動する場合」、「その他一時的にプログラムを中断する場合」に相当する場合は、その都度諸事情および研修期 間等を考慮して判定します。

3.小児科における地域医療への貢献

当プログラムは天草、水俣、人吉など熊本県内の各地方に研修可能な関連施設を有している。医療が専門分化する昨今で、地方の病院では救急を含めた急性疾患及び神経や腎臓等の慢性疾患、primary careが必要な新生児など様々な患者が来院する。小児科医はgeneralな診療を行う科と言われているが、専攻医が経験すべき最高の医療の場と言える。同時に少子化の今日で大切に子供を育てるという流れの中で、地域病院の小児科は必要不可欠な要素の一つである。また地域の開業医などとも連携して、予防医療や健診業務なども担っていて、病気の子供をみるだけでなく、地域全体の小児の健康増進に寄与している。関連施設の中には重症心身障害施設もあり、重心児のcareも行っている。このように一般医療と社会医療両面からcommunity-based medical careという形で地域社会に貢献している。

4.研修の評価

小児科内でのカンファにおいて知識・技術などの到達度を適宜評価していく。各年度終了時に指導医と研修医で到達度の最終チェックを行う。後期研修を含めた3年間の研修終了により(研修医を含めて5年)、日本小児科学会認定の小児科専門医取得のための資格を得ることができる。筆記試験、症例要約評価、面接試験を受験し、小児科専門医を取得する。

5.専門研修統括責任者 : 中村 公俊

6.連携施設・関連施設 : 熊本大学医学部附属病院(登録番号 7015)

熊本赤十字病院

熊本市民病院

国立病院機構熊本医療センター

熊本中央病院

熊本地域医療センター

国立病院機構熊本再春荘病院

くまもと江津湖療育医療センター

福田病院

 

阿蘇医療センター

熊本労災病院

水俣市立総合医療センター

人吉医療センター

くまもと芦北療育医療センター

天草地域医療センター

熊本県こども総合療育センター

小国公立病院

和水町立病院

 

宮崎県立延岡病院

国立病院機構 都城医療センター

国立病院機構 西別府病院