蛋白尿が出ていると言われたんだけど?


当科からの回答

 正常の人でも検尿で蛋白尿を指摘されることがあります。また腎臓病や膀胱腫瘍、血液疾患などさまざまな疾患で蛋白尿が認められます。検尿で蛋白尿を指摘された場合、病気が原因ではない生理的蛋白尿か、病気に伴って出ている蛋白尿なのかきちんと見極めることが必要です。

 正常では尿蛋白排泄量は1日に70mg程度で、そのうち10〜30mgがアルブミン、残りは分子量4万以下の低分子蛋白や尿細管由来蛋白(Tamm-Horsfall proteinなど)が占めています。腎臓には血液をろ過して尿の原料を作る糸球体と呼ばれる部分があります。ここにある基底膜はコーヒーのフィルターのような役目をしています。この基底膜は分子が規則的に並んでふるいの目のようになっており、ある程度より大きい物質は透過しないようになっています。またこの基底膜やその外側にある上皮細胞の細胞膜などはマイナスの電荷を持っています。血液中ではたいていの蛋白はマイナスの電荷を持っているため電気的な反発力が生じます。これらの分子ふるい構造、電荷による反発力で血液中の蛋白質はあまり尿に出ないようになっています。それでも小さな蛋白質はふるいの目を通ってしまいますので、そのような蛋白質は糸球体のあとに続く尿細管という部分で再吸収されて最終的には尿に出ないようになっています。何らかの原因でこのような機構に異常が生じたり、過度の負荷がかかったときには尿に蛋白が出るようになります。

尿蛋白はその発生機序から以下の5つのグループに分けることができます。

1. 生理的蛋白尿:激しい運動や長時間の立った姿勢、感冒などによる発熱などの負荷がかかったときに認められる蛋白尿で、原因が除去されれば蛋白尿は消失します。寝た状態を保ったあとで出す、早朝第一尿では陰性のことが多く、糸球体腎炎との鑑別のために早朝第一尿の検尿をすることが必要です。 生理的蛋白尿の場合、そのまま様子を見てかまいません。

2. 腎前性蛋白尿(Overflow Proteinuria):腎臓以外の病気で多量の不要な蛋白が血液中に生じ、それが尿のほうに流れ出てきたもの。多発性骨髄腫のベンスジョーンズ蛋白、交通事故などの大事故の際に筋肉が傷害されて生じるミオグロビン尿、何らかの原因によって血液中で赤血球が破壊されて生じるによるヘモグロビン尿などがあります。腎前性蛋白尿の場合、原因の治療が必要です。

3. 尿細管性蛋白尿:正常では分子量4万以下の中、小分子量の蛋白は糸球体から濾過されて尿細管で再吸収・代謝を受けています。薬剤や重金属中毒、間質性腎炎などで尿細管が障害されると中、小分子量蛋白主体の蛋白尿が生じます。この場合、尿蛋白量は1日に多くても1.5〜2g程度しか出ません。NAG(N-acetyl-β-glucosaminidase)やβ2-microglobulinなどが尿中に増加しますのでこれらを測定するとある程度の判断ができます。尿細管性蛋白尿の場合、医療機関での検査や、使用薬剤の検討が必要です。

4. 糸球体性蛋白尿:糸球体障害では1日0.1g〜20g以上までの様々な程度の蛋白尿が認められます。その量や質は原因となる糸球体疾患によって様々な特徴が認められます。また尿を遠心分離機で沈殿させてその中に含まれるいろんな不溶性成分を顕微鏡で見ると、円柱と言われる特徴的な構造物がよく認められます。硝子円柱は正常でも認められることがありますが、赤血球円柱や、細胞性円柱顆粒円柱などは明らかに異常で精密検査が必要です。糸球体性の蛋白尿であると判断された場合専門医にきちんと調べてもらって検査や治療を検討してください。自覚症状がまったく無くても腎不全になって一生血液透析をするようなことになる可能性があります。糸球体性蛋白尿が出ている場合、必ず腎臓専門医を受診してください。

5. 尿路性蛋白尿:膀胱炎や腎盂腎炎のような尿路感染症、膀胱ガンや尿管ガンなどの腫瘍性疾患などに際して、軽度の蛋白尿が認められることがあります。大部分の場合血尿を伴っていますので、疑いをもった場合は泌尿器科医に相談してください。


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