巣状糸球体硬化症
【概念】
巣状、分節状に傍髄質糸球体から硬化が生じ、次第に進行してゆく腎炎で、ネフローゼ症候群を呈することが多い。巣状とは全糸球体のうち80%以下で病変が認められることで、分節状とはひとつの糸球体の中で、部分的な病変がある場合を言う。
【原因】
判っていないが、高脂血症や酸化LDLが増悪因子になることが報告されている。移植腎に6〜28%の割合で再発が認められることから何らかの免疫反応の関与が疑われている。
【疫学】
日本では比較的発生頻度が少なく成人ネフローゼ症候群の20%程度。小児、成人ともに認められるが、20〜40歳代に多く、30歳くらいがピーク。先行感染との関連は知られていない。
【病理】
病初期には殆どの糸球体は正常の光顕像を示し、傍髄質糸球体にsegmentalな硬化像もしくは硝子様物質沈着を生じる。この硬化病変は徐々に進行して全糸球体硬化になる。蛍光抗体法では硬化部に一致してIgMの沈着を認め、C3が認められることもある。Foam
cellもしばしば認められる。Focalな病変のため病初期には微小変化群との鑑別が困難な場合がある。
皮質表層部弱拡像 | 皮髄境界部弱拡像 | 皮質表層部糸球体像 | 皮髄境界部糸球体像 |
上図:FGS症例の腎生検組織(PAS染色)。皮質表層の糸球体は殆ど正常の糸球体像を示しているが、皮髄境界部ではSegmentalな糸球体硬化像を認めた。
【臨床症状】
検尿異常、浮腫、高血圧などで発見される事が多い。臨床的にはステロイド抵抗性ネフローゼ症候群を呈し、進行性。高血圧が60〜80%の症例で認められる。
【検査所見】
尿 所 見:高度蛋白尿を呈し、血尿も大部分の症例で認められる。尿蛋白の選択性は低い。約半数の症例でネフローゼ症候群を呈する。
血液検査:ネフローゼパターンをとる。特徴的な所見は特に認めない。
腎 機 能:進行性の腎機能低下を示すことが多い。
【診断】
組織診断を行うが、病初期にはMCNSと鑑別が困難な場合がある。
【鑑別診断】
ネフローゼを来たす疾患、とりわけ微小変化型ネフローゼ症候群。
【合併症】
高血圧や高度の高脂血症
【経過、予後】
ステロイド治療に抵抗性で、10年で約50%が腎死に陥る。
【治療】
ステロイド治療:概して効果に乏しいが、病初期には効果が認められることもある。これは微小変化型ネフローゼ症候群との大きな相違点。効果が出る場合でも1ヶ月以上の治療期間が必要。
カクテル療法:抗凝固療法に加え、抗血小板療法、ステロイド、免疫抑制剤などを併用することがある。
ステロイドパルス療法:病初期において3〜4クール繰り返すと効果が見られる場合がある。
LDL吸着療法:LDL吸着カラムや血漿交換によってコレステロールを除去すると尿蛋白が減少することが知られている。