足や目が腫れるんですが?
当科からの回答
足や目の周囲のむくみを自覚して病院を受診される方は比較的良く見かけます。検査をしてもまったく正常で、地球に重力があるから一番下になる部分に水がたまるような人から、非常に重篤な病気が隠れている人までいて、その原因を調べることが重要です。浮腫の原因から大きく2つのグループに分けることができます。
1. 局所性浮腫:静脈やリンパの流れの障害や局所の炎症で生じる浮腫。原因によって更に4つに分けられます。
a) 静脈性浮腫:静脈の流れが妨げられて生じる浮腫です。
b) リンパ性浮腫:リンパ節が腫れたり、フィラリア感染などでリンパの流れが妨げられて生じる浮腫です。
c) 炎症性浮腫:感染症やアレルギー、やけどなどの炎症で生じる浮腫です。
d) 血管神経性浮腫:血管は神経支配を受けており脳梗塞などで神経が傷害されると浮腫を生じます。
2. 全身性浮腫:何らかの疾患によって浮腫を生じたもので、原因によって幾つかのグループに分けられます。
a) 腎性浮腫:腎臓の機能が何らかの原因で低下して、余分な水やナトリウムをうまく排泄できなくて体にたまってしまったり、腎臓から蛋白尿が大量に出てしまったために血液と体組織での水のバランスをうまくとることが出来なくなって生じるむくみです。腎臓の病気でむくみが生じる場合には検尿をするとたいてい何らかの異常が認められます。
b) 心性浮腫:心筋梗塞や心筋炎などで心臓の機能が低下してしまうと体の中に水やナトリウムがたまるようになります。心臓は右心系(肺循環)と左心系(全身循環)に分かれており、左心系が障害されると肺に水がたまって肺水腫といわれる状態になり呼吸が出来なくなります。右心系が強く障害されると全身に浮腫が生じます。心性の浮腫の場合、横になると心臓の負担が軽減するので状態が少し改善して尿が良く出るようになります。
c) 肝性浮腫:今C型肝炎が非常に問題になっていますが、慢性肝炎やアルコール性肝炎などで肝臓の機能が低下してくると、血液の中に水分を留めておくのに必要なアルブミンという蛋白質の合成が低下して濃度が落ちてきます。また肝臓の中に線維が増えて血流が障害されてくるため消化管から肝臓に血液を流す門脈の血圧が上がってきます。このような状態では水やナトリウムが体の中にたまるようになり、むくみや腹水を生じます。肝性浮腫の場合、採血検査や腹部超音波検査で特徴的な所見がありますので診断できます。
d) 栄養障害性浮腫:極度の栄養障害がある場合にむくみが生じることがあります。今の日本では一般の人には生じないでしょう。いくつかの非常に重篤な消耗性疾患の患者さんで生じる場合があります。またB1欠乏で脚気になると生じることがあります。
e) 薬剤性浮腫:風邪薬や漢方薬などを服用した後にむくみが生じることがあります。一般的には薬剤を中止すると自然に消失します。
f) 内分泌疾患による浮腫:甲状腺機能が低下すると粘液水腫といわれる浮腫を生じます。これは他の浮腫と違って指で押してもすぐに元に戻ってしまい、指の跡が残りません。なんとなくはれぼったくて体重も増え、寒がりになります。その他いくつかの内分泌の病気でむくみを生じますが、比較的特長的な症状を示すので採血検査などで診断されます。
g) 特発性浮腫:いろいろな検査をやって正常であるにもかかわらず、むくみを生じる人がいます。たいていは中年女性です。
以上のようにむくみの原因には様々な病気があり、それによって対応が異なります。きちんと検査を行った上で治療を行う必要があり、やみくもに利尿薬を使っても良いわけではありません。
もっと詳しく知りたい方は当科外来にお越しいただくか、近所の医療機関でご相談ください。