生体肝移植とは
健康な人の肝臓の一部分を、血管を付けて切除、摘出し、重い肝臓病の人の悪い肝臓と取り替える(移植する)という治療法です。
この方法によってこれまで座して死を待つしかなかった多くの人の命が救われるようになりましたが、一方で、手術手技の複雑さや健康な人(ドナー)にメスを入れることの是非といった問題があります
生体肝移植の成り立ち
胆道閉鎖症という肝臓病の児が今でも日本全国で毎年、130人位生まれています。この病気は葛西手術という手術で助かる児もいますが、約2/3の症例はその手術を受けても、いずれ肝硬変から肝不全に進行し、肝移植をしなければ死に至ってしまうという難病です。
胆道閉鎖症にて末期肝不全に陥ったお子さん |
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移植時に摘出された肝硬変の肝臓 |
1988年頃、そういったお子さんたちが数多く脳死肝移植を受けるために、海外へ渡航しました。当時の日本の小児外科医は、親御さん達の強い希望もあり、何とかそのお子さんたちを国内で救えないかと苦悩した時代でありました。その苦悩の中で生まれたのが、生体部分肝移植という治療法でした。
生体肝移植の世界最初の成功例はオーストラリアで行われたものですが、その患者さんは実は熊本のお子さんでした。そして、1989年12月に日本で最初の生体肝移植が行われ、翌年の6月、田中紘一先生らの手によって京大での1例目が施行されました。田中紘一先生には1998年の熊大病院での熊本県第1例目の生体肝移植から指導していただきました。
その後、生体肝移植はその成績が良好なことから、全世界に広まるともに、移植の対象が小児から成人へと拡大されていきました。
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