content_title

研修だより

研修の実際と新研修医への伝言

熊本大学医学部附属病院群臨床研修医 2年次 大嶋 俊範


 私は熊本大学医学部附属病院の研修コースの中で、協力型施設として健康保険人吉総合病院を選びました。そして熊大病院では代謝内科,総合診療部,神経内科,病理部をローテートいたしました。総合病院では、麻酔科,整形外科,脳神経外科,総合外科,放射線科,小児科のほか、人吉地区の開業医の先生のもとで産婦人科と精神科をローテートいたしました。また、人吉にいた1年間は、月に5回の宿当直で救急医療も経験いたしました。

 このように初期臨床研修制度では次々と研修の診療科が変わるため、医学部6年の当時、"何も考えずに毎日を過ごしてしまうと何のための2年間だったのか分からなくなる"ような気がしました。そのため、より有意義にこの制度を生かすために2年間の大雑把な目標を立てることにしました。その目標とは、「1人で簡単な外科処置ができる」「 頻繁に関わる症状に対し、適切に近い処置ができる」「 命に関わる疾患を見逃さない目を身につける」「命に関わる疾患に対し、適切な初期治療・初期の検査オーダーができる」という4つの目標です。そしてこの目標を達成するために、市中病院は「考えて動く救急診療を経験」でき、「自分自身でカリキュラムを構築」でき、さらに「ある程度、完結型の医療圏にある病院」を選ぶことにしました。また、じっくりとひとつひとつの症例を経験し、患者さんとよくコミュニケーションをはかるとともに水準の高い医療を経験することも大切だと考えました。そのため市中病院で2年間を過ごすのではなく、大学病院での研修と市中病院での研修を共に行うことのできるコースを希望し、大学病院での研修を決めました。また働くというだけでもかなりのストレスになる中、出身大学の大学病院で仕事を始めることで、より順調なスタートを切ることができたと感じています。

 今、実際に研修を行ってきて、各々の施設での長所と短所を実感しています。熊大病院での実習では、専門性が高くなりすぎるという短所は否めないものの、「多くの診療科があり、興味がある分野を深く学べる」「他分野に関してコンサルトで学ぶことが多い」「多くの先生の考え方を知ることができる」などの長所がありました。診療手技のシミュレーターも揃っています。また、大学病院では経験できないと思いがちなcommon diseaseに関しても病棟業務の中で多数経験することができました。市中病院での研修では医師の数が少なく研修医でも十分戦力として期待されているため、自分で考えて行う診療行為がかなり必要だったと思います(もちろん、指導医のサポートは十分にあります)。その一方で、どちらかというと「習うより慣れろ」という環境の下、限られた先生の考え方で教えられることも多く、自分で勉強をする時間もなかなかとれないため、知識のフィードバックがかからないこともあったように思います。

 さて研修についてばかり述べてきましたが、研修中には様々な楽しい行事も行われました。特に、人吉総合病院では病院行事として花見や忘年会、職員旅行、お祭りへの参加などがあり、日頃の診療・研修から一息つける時間となったように思います。また、どこの病院でも診療科を移るたびに歓送迎会を開いてくださり、多くの先生方と仲良くなることができました。初期臨床研修制度における最大の利点は、医療全般に対して造詣が深くなる点はもちろん、将来専門とする診療科以外の先生方と仲良くなることで様々な先生方との連携ができるという点も非常に意義のあることではないでしょうか。ただ、せっかくいろんな診療科を研修できるからといって、どれもこれも手を出すのではなく、自分の中で取捨選択しながら検査手技など身につけていくことも大切だと思います。また、熊大病院群の研修プログラムは、研修をする診療科の選択自由度が高くなってきていますが、消化不良を起こすような設計はしないようにすべきだと思います。

 最後に、研修の姿勢として私は、患者さんの訴えに対しその症状をそのまま指導医に伝え、その指示に従うという方法をできるだけ取らないようにしています。患者さんの状態がどうであるのかを自分なりに問診・診察・検査を行い、その結果も含めて指導医に伝え、ときには自分の考えも合わせて伝えるようにしています。そうすることで、単なる指示受けだけではなく、自分の考えと指導医の考えを照らし合わせることができ、自分の知識や経験として強く印象づけることができていると思います。この姿勢は、今後も持ち続けていきたいと思います。研修を修了するにあたり、どこで研修を行うかではなく、どういった研修を行うかが重要でありと考えています。