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研修だより

「研修医の想うこと」

熊本大学医学部附属病院B3プログラム
門久 政司

 もうすぐ2年間の研修も終わります。これまで2年間の研修期間で多くの方々の支えを受けてきました。ありがとうございました。そして、これまでの研修期間の中で自分が感じてきたことをここに記そうと思います。

 医師国家試験を終え、腑抜けの殻になっていた春休みも終わり、ついに私は研修医として働き始めました。忘れもしません。生まれて初めて受け持った患者さんが心室頻拍で目の前で意識を失っていった初日の夜。私は茫然と立ち尽くし、何をどうすればいいのかも分からず、指導医の先生や看護師さんがテキパキと対応していく姿をただただ見つめていました。これはとんでもない世界に飛び込んでしまったと改めて感じました。

 当初は何をするにも初めてで、何も分からないまっさらな自分なりに、がむしゃらに日々を過ごしていたような気がします。ひとつひとつ出来ることが増えていくと同時に、出来ないことにふたつずつ気付いていくといった感じでしょうか。病院からの帰り道に買った第3のビール一缶をしっぽりと飲み干すことを覚えました。

 私はB3プログラムでしたので半年間の大学病院での研修の後、人吉総合病院へ赴きました。人吉はとても風情のある土地です。病院は球磨川と人吉城を目の前に眺める場所にあり、病院から一歩外に出ればとても穏やかな時間が流れています。

 病院業務というものにも少しずつ慣れ始め、自分が進む道は何なのか、自分はどういう医師になっていくのか、なんていう少し生真面目なことを考えるようになったのもこの頃だと思います。

 人吉での一年間の研修を終え、再び大学病院へ戻ってきました。大学病院では外科系の科ばかりをローテートしました。純粋に手術はかっこ良いと感じたし、チームで取り組む部分も好きです。

 私はもともと学生時代はボート部に所属していました。ボート部は伝統的?に個性的な人が多く、普段はみんなそれぞれ好き勝手やっているのに、いったん艇に乗るとみんなの気持ちをひとつにして、コックス(舵手)の指示に従い、ただひたすら漕いで漕いで漕いで、ゴールを目指すという、とてもシンプルでとても繊細なスポーツです。そんな私はいつの間にか外科医への憧れを抱き、2年間のスーパーローテート研修を終えようとしている今、外科医としての道を歩み始めることを決意しました。

 最終的にものを言うのは人間性だと、これまで指導を受けてきた先生方の口から時折聞いてきました。初めはその意味がよく分からなかったけど、最近はなんとなくですが先生達の言いたかったことが分かるような気がしています。これからも大変な時こそ、自分に余裕がない時こそ、肝に銘じておきたいと考えています。

 自分の将来が見えずに、夢は何だ?と聞かれても困っていましたが、なぜか高校2年の頃に医師を志し始めた自分がいました。それまでは医療とは全く無縁の世界にいたので、周囲はかなりびっくりしたようですが、私はようやく自分の進むべき道が見つかったと妙に納得していました。

 変わっていったり、変わらなかったり。今後自分がどのようになっていくか良く分かりませんが、ひとまず自分が選んだ道を進んでみようと思います。医師としての第一歩をようやく歩み始めた研修医の今の気持ちです。