微小変化型ネフローゼ症候群
【概念】
突然に(数日〜2週間)高度の蛋白尿を来たしネフローゼ状態に陥る疾患で、ステロイドが著効するが、再燃を来し易い疾患である。
【原因】
Tリンパ球の機能異常(suppressor機能の亢進が認められる)、高IgE血症の関与などが指摘されているが、まだ不明な点が多い。尿蛋白漏出の機序として上皮細胞足突起表面に存在する陰性電荷の減少により陰性電荷をもつアルブミンが係蹄壁を透過しやすくなることが知られている。
【疫学】
小児から若年に発症することが多いが、全年齢層で認められる。
【病理】
光顕上殆ど異常を認めず、蛍光抗体法も陰性である。電顕では広範な上皮細胞足突起の融合が認められるが、この疾患に特異的な所見ではない。
PAS染色 | Azan染色 | PAM染色 | 電子顕微鏡像 |
上図:微小変化群の腎生検組織像。光顕上、異常を認めず、蛍光抗体法でも全て陰性であった。電顕ではびまん性の足突起の融合が認められた。
【臨床症状】
先行感染が認められる場合もあるが、大部分は突然に高度の蛋白尿、乏尿を生じ高度の浮腫・体重増加を来たす。胸水・腹水も来たしやすい。発症後1〜2週で来院することが多い。
【検査所見】
尿所見:高度蛋白尿を来たすが、通常血尿は伴わない。尿蛋白の選択性は高い(0.02程度)。
血液検査:高度の低蛋白血症とコレステロール値の上昇を示す。血清IgGは低値をとることが多い。血清IgEの上昇がしばしば認められるが、原因は不明。
腎機能:正常の場合が殆どだが、腎前性腎不全を来たす場合もある。
【診断】
急激に発症したネフローゼ症候群で、腎生検にて確定診断を行う。
【鑑別診断】
巣状糸球体硬化症、膜性腎症など。特に巣状糸球体硬化症は、腎生検で微小変化群と区別できないことがあり注意を要する。
【合併症】
腎前性腎不全など循環血液量低下に伴う循環障害を来たすことがある。
【経過、予後】
ステロイドによく反応し、7〜10日で急激に蛋白尿が減少し完全寛解に至ることが多い。利尿期には突然大量の利尿を来たすことがあり注意が必要である。再燃を来たし易いため、ステロイドの減量には細心の注意を払う。
【治療】
ステロイドの内服療法が基本。通常2mg/kgもしくは40〜60mgのプレドニゾロンを投与する。一ヶ月後、5mg/2wくらいのスピードで減量を行う。再燃例ではステロイドの再投与を行い、再燃を繰り返す場合にはパルス療法や免疫抑制剤の併用を考える。