アミロイドーシス


【概念】
 無構造の硝子様物質アミロイド(5%程度の糖を含む糖タンパクないしムコ蛋白)が組織に沈着し引き起こされた組織障害やその病態のこと。

【原因】
 様々な原因疾患があるが、原因不明の原発性アミロイドーシスも認められる。アミロイド形成は前駆物質の産生とその組織沈着の二相に分かれる。前駆物質の産生過剰や分解抑制によって前駆物質が増加し、網内系で処理されて重合しβ-pleated sheet構造に配列されて組織に沈着すると考えられている。大きくは原発性(AL)と続発性(AA)に分けられる。腎疾患で重要なのはALおよびAAアミロイドーシスと透析アミロイドーシスである。

【疫学】
 原発性アミロイドーシスは日本で年間300例程度で比較的頻度が低い。続発性は慢性炎症性疾患を長期に観察すればかなりな頻度で認められる。

【病理】
末期には萎縮するが、腎や臓器は腫大する。腎では糸球体、細動脈壁、尿細管周囲に沈着し易い。AL型は糸球体にびまん性に沈着し易く、AA型は塊状に沈着する。血管では細、小血管中心に沈着が認められ、内皮細胞下に広がる。尿細管壁では、ヘンレループの細い脚、集合管に沈着し易い。アミロイドはコンゴーレッド染色で赤橙色に染まり、偏光にてapple greenの複屈折を示す。過マンガン酸処理にてAL型は染色性を保つがAA型は染色性が消失するので区別できる。免疫染色で染め分けることも可能。電顕では径7〜12 nm以下の細線維が内皮下から基底膜にかけて認められる。

原発性ーPAS染色
原発性ーCongo-red
過マンガン酸処理後
原発性ー偏光像
続発性ーPAS染色 続発性ーcongo-red 過マンガン酸処理後

原発性アミロイドーシス(上段)及び続発性アミロイドーシス(下段)の糸球体組織像。原発性では糸球体にびまん性にPAS陽性物質が認められ、congo-red染色で赤橙色の染色を示し、偏光顕微鏡下でapple greenの複屈折を示した。続発性アミロイドーシスでは糸球体に塊状にPAS陽性物質が認められ、congo-red染色で赤橙色の染色を示した。

【臨床症状】
 初発症状としては蛋白尿が多く、疾患の進行とともにネフローゼ症候群を呈し、腎機能が低下することが多い。高血圧を示すこともあるが、一般的には自律神経失調症を伴うため低血圧を生じるようになる。多臓器の障害を伴うことが多く、臨床症状は多岐にわたる。二次性の場合原疾患に症状がかなり左右される。

【検査所見】
尿 所 見:蛋白尿を呈し、大量の蛋白尿(20〜30g)を生じることも多い。血尿は軽微。尿蛋白にBence-Jones蛋白が出現する場合もある。
血液検査:ネフローゼパターンを呈する。原疾患に基づく異常も認められ、M蛋白が存在する場合もある。
腎 機 能:低下例が多く特に原発性では比較的急速に進行する。腎静脈血栓症も合併し易い。

【診断】
 組織診断でアミロイドを確認する。腎生検が困難な場合、直腸生検を行うことが多い。アミロイドを確認したら、原発性か続発性かの診断を行っておく(予後が全然違うため)。

【鑑別診断】
続発性は原疾患をきちんと診断しておく。

【経過、予後】
 原発性アミロイドーシスの予後は極めて悪い。腎症状が出現したあとの進行は急速でたいてい1年以内に死亡する。3年生存率は10%以下。二次性は原疾患の活動性に依存する。

【治療】
有効な治療法はほとんどなく、対症療法のみ。
原発性では腎不全に対し透析療法を行うが、自律神経失調症による低血圧や心不全のため透析療法の維持が困難になる。ステロイドは禁忌。
続発性では原因疾患の治療を行う。DMSO(dimethylsulphoxide)が有効であったとの報告も認められる(原発性には効果なし)。