透析をしないといけないといわれたんだけど?


当科からの回答

様々な原因で腎臓が障害され、腎機能が正常の10%以下に低下した場合、血液透析や腹膜透析によってその機能を補う必要があります。腎不全には急激に発症した急性腎不全と、徐々に進行した慢性腎不全があります。急性腎不全は様々な原因で引き起こされますが、その原因を除去しうまく治療を行うと2週間から1ヶ月で腎機能が回復すること良くがあります。それに対して慢性腎不全は徐々に進行し、その機能が回復することはありません。

現在、日本では約20万人以上の患者さんが血液透析を受けています。600人に1人の割合ですから、たいていの人では、親類か知り合いに透析患者さんがいると思います。最近ではごくあたりまえの治療法になってきて、医療費も1兆円くらいかかっています。慢性腎不全の原因となる病気を直せれば良いんでしょうが、まだ原因もはっきりしていないため、進行を遅らせるのが治療の中心です。

一般的には血清クレアチニン値が10mg/dl(糖尿病では8mg/dl)を越えるようになると透析療法を考える必要があります。その方法には血液透析と腹膜透析という大きく2つの異なった方法があります。

血液透析は1分間に200ml以上の血液を体外で循環し、透析液でその中の不必要な物質を洗い流してしまう方法です。週3回、1回に4時間の血液透析を行うことが標準的な方法です。時間的な制約が大変ですが、治療の本質的な部分を病院が管理するため、相対的に受け入れる人が多いようです。それでも食事や生活の自己管理は重要です。
腹膜透析は1日に4〜5回、1回2リットル前後の透析液をおなかの中に入れ、腹膜を介して体内の老廃物を洗い流す方法です。これは患者さん自身が自宅で行います。最近はバッグ交換を自動で行う機械も登場し、生活リズムや患者さんの腹膜の状態に合わせて色々なやり方ができるようになりました。2週に1度の通院が必要ですが、自己管理ができる人には便利な方法です。

 それぞれの方法にメリットとデメリットがあります。病気の状態や合併症、自分の生活や仕事、家庭環境などに合わせてどちらを選ぶかを選択すれば良いでしょう。どちらの透析療法を選ぶにしても、十分な量(効率)の透析がなされているかどうかが、予後を決める上で重要になってきますので、定期的なデータの評価が重要になります。
 透析が必要になったと主治医から言われた場合、受け入れるのは大変かもしれませんが、元気なうちに準備して予定導入をするほうが良いようです。一生付き合わないといけない治療法です。無理をして透析導入を遅らせて他の臓器障害を来たしたり、救急車で担ぎこまれたりしたら大変です。


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