腎生検の組織処理依頼について


腎生検の組織処理については、その特殊性から、信頼して依頼できる施設が殆どありません。そのため当科では熊本県内もしくはその近郊の医療施設からの依頼に限り、当科で組織処理と組織診断を行っています。腎生検組織を当科では以下のように処理していますので、それに対応して腎生検組織を処理して当科医局まで、依頼書とともに提出してください。光顕診断書は組織を受け取ってから1週間前後で返送します。現時点では組織処理の費用はいただいておりません。

組織処理の仕方:全部する必要はありません。当科で大部分は行います。光顕用標本はDubosq-Brazil液で固定し、そのまま冷蔵庫に入れておいて下さい。電顕用標本は2.5%グルタルアルデヒド溶液のままで置いておいて下さい。凍結標本は生検時に凍結して当科のディープフリーザーに入れておいて下さい。また医局第一実験室の冷蔵庫付近にある腎生検リストに名前を忘れずに書いておいて下さい。不明な点は、096-373-5164第三内科医局まで連絡してください。

【光顕】
1) Dubosq-Brazil液で3時間から一晩固定する
2) 70%エタノールで数回洗浄する。現在4℃で管理しているが、室温で保存してもかまわない。
3) この状態で冷蔵庫の所定の場所に置いておく
4) 腎生検リストへの記載を忘れずに行う

【電顕】
1) 2.5%グルタルアルデヒドで30分〜60分固定する(4℃)
2) 0.1 mol/lカコジル酸緩衝液で5〜10分間洗浄する。
3) 1%オスニウム酸固定液で一晩固定する。この固定液は高価なため、必要量以上使用しないこと。一人分の組織の固定に0.1mlもあれば十分。
4) エタノール系列で脱水する
   50%エタノール 30分
   60%エタノール 30分
   70%エタノール 30分
   80%エタノール 30分
   90%エタノールに移して冷蔵庫の所定の場所に置いておく

【凍結組織】
1) クライオモルド(1号)の底にOCTコンパウンドを少量入れる
2) 腎組織を採取後すぐに両刃のかみそりで組織を切り分ける。切り分け方については別図を参照。
3) 凍結用の組織をクライオモルドの中に入れコンパウンドとなじませる
4) 組織をモルドの中央に水平に置く
5) OCTコンパウンドを注ぎ足す
6) 液体窒素を使用する場合、モルドを入れたり出したりしてゆっくり凍らせる(なぜか分らないがゆっくり凍らせたほうが切りやすくなる)。ドライアイスを使用する場合は速やかに凍らせる。
7) フィルムの空きケースに生検番号と名前を書いて、所定のディープフリーザーの中に入れておく

注意事項

1. 腎生検リスト記入を忘れないこと。
2. 木曜の午後4時までに固定、洗浄が終わっている組織は至急の場合、翌日夕方にPAS染色まで観察可能。それ以降の分は翌週になります。
3. E-mail addressがある場合は連絡してください。報告書を添付ファイルで送る事が可能です。郵送の時間が短縮できます。Windowsのword 2000を使用していますが、対応できない場合はテキストファイルとjpegの画像ファイルを送ることになります。報告書のサイズは約1Mで、画像が必要な場合は画像は一枚が約150kで、30〜50枚ありますのでその一部を送ります。
4. 電顕については、当方で必要を認めた症例について観察を行います。報告書の送付まで約1ヶ月かかります。

固定液作成方法:試薬がない場合は生検の前日に当科に来て作成してください。

各種固定液等作成法

【光顕用Dubosq-Brazil液】
   ピクリン酸       20mg
   80%エタノール     3.0ml
   ホルマリン原液   1.2ml
   濃酢酸         0.3ml


【電顕用固定液】
   25%グルタルアルデヒド     10ml
   0.1 mol/lカコジル酸緩衝液  90ml
   Sucrose               2g


【ホルマリン原液】
   局方ホルマリン       400ml
   炭酸マグネシウム       10g
   水酸化マグネシウム     10g


【0.1mol/lカコジル酸緩衝液】
   カコジル酸ナトリウム  21.4g
   1N HCl ? ml
pHを7.4に調整し最終的に1000mlにする

腎生検組織の切り出し方:診断の基本は光顕のため、光顕標本を優先させてください。。患者の状態に問題がない場合、1.5〜2.0cmの標本を3本採取してください。組織の量が少ない場合はまず光顕に入れ、次は凍結組織を作製してください。以下の図のような切り出しを各組織について行なってください。


注意事項

1) 組織をつままないこと。ピンセットや針でちょっと圧迫しただけで組織は挫滅してしまい観察できません。
2) カッティングには両刃の薄いかみそりを2つに割って、鋭いナイフを作り、クロスさせて切ること。カッティングによる組織の座滅を時折見かけます。当科ではフェザーの両刃かみそりを使用しています。
3) 電顕や凍結用の組織の移動には、ピンセットの隙間に生食やOCTコンパウンドをつけて、表面張力を利用して行ってください。決してつままないこと。つまんだ組織は観察できません。
4) 皮質表層には脂肪組織が付着していることがあります。この場合凍結組織には脂肪組織を入れないで下さい。組織をうまく切ることができなくなります。
5) 光顕や電顕組織は決して凍らせないこと。凍結されると組織が破壊され観察が不可能になります。固定した標本は冷蔵保存が望ましいが、常温でも保存可能です。当科に持ってくる際に凍結標本とその他をごっちゃにして、凍らせてしまったら組織が台無しです。

腎生検依頼書:腎生検組織の診断には、臨床的検査データや十分な病歴などが必要です。組織のみでは診断できません。必ず必要事項を記載して早急に当科に送ってください。以下に病歴用のファイルを添付してありますのでダウンロードしてお使いください。

腎生検依頼書(Word 2000):Windows用ですがMacでも見ることができると思います。

腎生検依頼書(PDF形式)


依頼書はFaxもしくはE-mailでどうぞ。E-mail:kanjin@kaiju.medic.kumamoto-u.ac.jp
Fax:096-366-8458
何かご不明な点があれば、096-373-5164第三内科医局まで連絡してください。