糖尿病で腎臓が悪くなるって本当ですか?


当科からの回答

食生活が豊かになり、また車社会の進展、家電製品の普及で私たちの運動量は極端に減少し、みんなが糖尿病になる時代になってしまいました。そのせいで糖尿病を原因とする慢性腎不全の患者さんが急激に増加しています。
糖尿病になると口渇や多尿などの症状が出ますが、初めのうち臓器障害は特に認めません。しかし徐々に全身の血管に障害を来すようになり、10〜15年経つと体中のいたる所に障害が出てきます。その代表的な疾患として糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、虚血性心疾患、閉塞性動脈炎が挙げられます。

腎臓では、尿中マイクロアルブミンという物質を測定すると、異常が出始めた人を見つけ出すことができます。この段階で見つけると、糖尿病の治療をきちんとやれば腎臓が回復する可能性があります。しかし治療が不十分だと、徐々に尿蛋白が増えてきて、一般の病院で行っている検尿で蛋白尿が陽性になってきます。こうなったら後は蛋白尿が増加して、ネフローゼと言われる状態になります。腎機能も低下して、蛋白尿が出始めてから2〜5年で透析が必要になります。

一般的な検尿で尿蛋白が認められるようになったら、どんなに血糖のコントロールを厳重にしても残念ながら進行を食い止めることは出来ません。近年、アンギオテンシン変換酵素阻害薬や、アンギオテンシンU受容体阻害薬が腎臓を保護することが判り、多用されています。しかし進行を遅らせるだけであり、本当はもっと早く見つけて糖尿病の治療をきちんと行うことが大事です。糖尿病になって10年経過したら、定期的に尿中マイクロアルブミンを測定して、腎障害の有無をチェックしたほうが良いでしょう。


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