【 更新日 2015/04/01 】
熊本県下の医師会の先生へ
熊本県下の医師会の先生には、平素より熊大病院神経内科にご厚情を賜り、心より御礼申し上げます。当科の近況をご報告させていただきます。
熊本大学神経内科は臓器別診療の流れの中で、1995年の秋に内野誠教授の陣頭指揮のもと、診療科として発足し、2003年に講座に昇格しました。2010年度末をもって内野前教授は退官され、第2代熊本大学神経内科教授として安東由喜雄教授が2012年1月に就任いたしました。安東教授は1983年熊本大学医学部を卒業後、熊本大学医学部第一内科神経内科に所属し、外来医長や病棟医長などを歴任しながら神経内科学の研鑽を積みました。スウェーデン留学後は臨床検査医学に籍を移し、2006年7月より熊本大学大学院 医学薬学研究部 病態情報解析学分野の教授、および熊本大学医学部附属病院 中央検査部長、輸血部長を勤めました。アミロイドーシスに関する世界的研究のみならず、自律神経疾患の診断、ニューロパチーの成因に関する病態解析、検査医学領域の先進的研究などを通して様々な情報を世界に発信し続けています。また熊本大学医学部医学科長としての熱心な指導に、学生の信頼は厚く、毎年多くの学生が当科での基礎演習、実習を希望しています。近年全国の名だたる大学においても、神経内科への入局者数は低迷しており、人員不足に悩む大学が多いと聞きますが、当教室では安東教授を慕って毎年10名前後の医局員が新たに入局しています。現在、教授1、特任教授 3、准教授 1、講師 1、診療講師 2、助教 1、特任助教 5、医員 8、外部研修 2、大学院 19 (社会人大学院を含む)、特別研究員 2、研究補助員 2名の陣容で診療、教育、研究に従事しております。
さて当院では2014年9月に新しい外来棟が誕生し、スタッフは気分一新、外来診療に当たっております。当院では頭痛、めまい、不随意運動、薬剤性神経障害、てんかん、認知症などの一般的な神経疾患、脳梗塞や頸動脈狭窄症などの脳血管障害、さらには専門性の高い神経筋疾患や神経免疫疾患、遺伝性疾患まで多岐にわたる疾患に対応しております。ただし神経内科においては、何よりも詳細な病歴聴取と系統的な神経診察が重要であり、初回診察が診断プロセスの大部分を占めるといっても過言ではありません。そのため初診患者の診察には、少なくとも30分程度の時間が費やされます。このような中、当院では外来患者さんをお待たせする時間を少しでも短くするため、初診を含め完全予約制をとっております。患者さんをご紹介いただく際には、当院予約センターから診察日時の予約が可能ですので、お手数ですがよろしくお願いいたします。なお疾患の緊急性によってはこの限りではなく、柔軟に対応いたしますので、その際は直接神経内科の病棟医長や救急対応医にご連絡ください。
入院診療の近況については、2010年秋に東病棟が開院し、これに伴い神経内科も西病棟4階と5階に移転いたしました。同年12月からはSCU(脳卒中ケアユニット)3床が設置され、より集学的な脳卒中の救急診療体制が可能となっています。現在、虚血性脳血管障害に対しては脳神経外科や県内の各施設と協力しながら超急性期血栓溶解療法や血行再建術を行っています。また種々の神経免疫疾患に対する血液浄化療法・免疫グロブリン大量静注療法、家族性アミロイドポリニューロパチーの肝移植および新薬の治験、重症ギラン・バレー症候群や破傷風の全身管理などの高度医療も、院内各診療科と連携し推進しております。今後も先進的な医療については、いち早く情報を集め、安全に実施できる体制を構築したいと考えております。
研究面では、アミロイドーシスの病態解析と治療法開発、地域間格差是正を目指しての脳卒中医療体制の構築、CADASILを含む遺伝性脳卒中の病態解明、筋ジストロフィーや筋萎縮性側索硬化症の遺伝子・再生治療、筋疾患・運動ニューロン疾患の病態解析と治療法開発、神経免疫疾患の病態解析と治療法解析など、「地方から世界への情報発信」を合い言葉に、医局員一同が切磋琢磨しながら、幅広い分野で着実に業績を挙げています。
以上、神経内科の近況をご報告いたしました。今後ともご指導・ご鞭撻を賜りますようよろしくお願い申し上げます。
2015年4月1日
文責:神経内科学分野 医局長 中島 誠