血尿が出ていると言われたんだけど?
当科からの回答
血尿には、目で見てはっきり色の違いがわかる肉眼的血尿と、検査によってのみ判る顕微鏡的血尿があり、大部分の患者さんは後者です。尿に対して約
0.1%以上の血液が混入すると肉眼的に色調変化が判るようになります。肉眼的血尿でも尿の酸性度の違いや時間経過とともに鮮紅色からコーヒー様の暗褐色までさまざまな色調があります。
血尿を認めた場合それが、どこからどのような原因で生じているのかを調べる必要があります。しかしこれは思いのほか大変です。さまざまな検査を受けないと診断をすることができないため、お金と時間がかかります。そこで簡便な方法としては、まず尿を遠心分離機にかけて沈殿物(沈渣)を顕微鏡で見てその形態を判断します。尿をろ過する糸球体と言う部分由来の血尿か、それ以外の尿路由来の血尿かをこれである程度判断できますので、その上で必要な検査を的を絞って受けたら良いでしょう。
血尿をきたす疾患は色々ありますが、大きく4つのグループに分けることができます。
1. 糸球体性血尿:糸球体腎炎で見られる血尿で、尿中赤血球は変形していることが多く、円柱と言われる構造物を伴っていることがあります。この中には日本の慢性糸球体腎炎の中で最も頻度が多いIgA腎症、急性咽頭炎に罹った後で数週ほどたってから起こる急性糸球体腎炎、膜性増殖性糸球体腎炎、急速進行性糸球体腎炎、全身性エリテマトーデスの患者に併発するループス腎炎などの疾患があります。
2. 尿路性血尿:尿路系の病気で生じる血尿で、尿中赤血球はきれいなドーナツ型を呈します。尿は水分摂取量で濃さが変わるのでそれに応じて尿中赤血球も膨らんだり縮小したりするのでその点を考慮することが必要です。この範疇の血尿はさらにいくつかの原因に分類できます。
a) 腎・膀胱・尿管などに生じた腫瘍
b) 膀胱炎や腎盂腎炎などの感染症
c) 腎や尿管内の結石
d) 外傷性の血尿
3. 血管由来の血尿:腎臓は腎門部と言われる腎臓の真ん中付近で体とつながっているだけなので、立っただけで腎臓が下にずり落ちて静脈を圧迫し、血尿を生じる場合があります。病気ではありませんが、このような腎臓を遊走腎といいます。この場合、立って歩くだけで血尿が生じますが、やせた若い女性に多いことが知られています。またさまざまな原因で腎静脈が圧迫されると同様の血尿が生じます。
4. その他:遺伝的に血尿を生じる家系の人がいます。また血液の病気や肝臓病、抗凝固薬の服用などで出血をし易い状態のときは血尿を生じることがあります。
これらの血尿の鑑別には必要に応じて検尿、早朝尿検尿、尿沈渣所見、尿細胞診、腹部レントゲン写真、経静脈的腎盂造影、腹部超音波検査、腹部CT、腹部MRI、腎生検などの検査を駆使する必要があります。ただ完全に診断することは難しい場合もあり、その場合は経過を追って尿路系の悪性腫瘍や糸球体腎炎などの重要な疾患を見逃さないようにする必要があります。
もっと詳しく知りたい方は当科外来にお越しいただくか、近所の医療機関でご相談ください。