患者様へ

肝移植の手引き

生体肝移植の詳細

 日本では、脳死肝移植の機会が限られていることを背景に、生体肝移植が多く行われています。熊本大学でもこの方法を行っていますので、それについて詳しく説明します。

 生体肝移植とは、生きた方から、肝臓の一部分を手術によって切り取り、これを、患者さんの移植用臓器として用いるもので、あげる方(ドナー)ともらう患者さん(レシピエント)のお二人が同時に手術されることとなります。

1.生体肝移植ドナー(肝臓を提供する人)の条件(どのような人がドナーになれるのか)

ドナーとしての妥当性の条件は以下のようなものがあります。

(1)自発性
 強制されたのではなく、移植に関する正確な情報を提供された上で自身の意志として肝臓の一部提供を申し出た方。
(2)続柄
 日本移植学会では、民法上の親族の範囲である、6親等以内の血族、3親等以内の姻族(配偶者ならびに配偶者の3親等以内)の範囲内で選択することを倫理指針として原則としています。なお、2007年7月から、臓器移植法の運用指針が改正され、ドナーとなる方の、レシピエントとの親族関係を戸籍などの書類で確認する義務が医療機関に課せられております。このため、保険証などで確認できる範囲外の方がドナー候補となっておられる場合には、戸籍抄本などのコピーを熊本大学の倫理委員会へ提出する必要がありますので、ご留意ください。
(3)年齢
 原則として成人であり、65歳程度までの方。ちなみに、国内では70歳までのドナーはおられ、例外的に熊本大学でも65歳以上のドナーが数名おられます。高齢のかたは、若いかたより、さらに綿密な検査を経る必要があります。
(4)からだの状態
 原則として投薬などを必要とせず肝臓を含め健康な方であり、肝炎のウイルスなど感染源がなく、また最近の悪性腫瘍の既往も無い方。
(5)肝臓の大きさと働き
 予測される移植肝の大きさがレシピエント体重の0.7%程度以上で、かつドナーに残る肝臓がその摘出前の大きさの3割以上となるような方。この大きさは、CTを用いて推定することができます。
 当然、生体肝移植ドナーとなられるかたは、その肝臓の働きは正常でなくてはなりません。ある程度以上の脂肪肝など、日常生活上特に異常を感じておられなくても検査で異常が確認されれば、その時点ではドナーとはなれません。
(6)血液型
 血液型は、輸血できる組み合わせ(図4)が望ましいです。ただ、輸血出来ない組み合わせ(血液型不適合)のドナー候補しかおられないときには、レシピエント側にいろいろな処置を行うことによる拒絶反応の予防手段が開発されてきており、血液型適合移植ほどの成績はまだ期待できませんが、かなり成功率は高くなってきておりますので(後の「移植成績の一覧」でご覧ください)、最初から不適合移植をあきらめずにお考えいただければと思います。
(7)ドナーとなるのに不適当な状態
  • 全身性活動性感染症
  • HIV 抗体、HBs 抗原が陽性
  • 悪性腫瘍(治癒したと考えられるものを除く)
  • 肝機能異常
図4
図4 ドナー、レシピエントの血液型の組み合わせ
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