患者様へ

肝移植の手引き

(2)ドナーの手術と術後経過

 ドナーの開腹の傷は、逆T字切開(図11)といいまして、みぞおちからお臍の上までの縦の傷と、その下端から両横に延びる横の傷となります(レシピエントと同様の傷です)。肝臓のどの部分を切り取るかで、横方向の創の大きさが変わります。

図11 ドナーの開腹の創 (右葉切除の術直後)
図11 ドナーの開腹の創

右葉の場合は、右の方に大きく伸び、左外側区域の場合は、横の創は比較的短くなります。開腹したら、肝臓に入っていく血管、出ていく血管をきれいに剥離したのち、肝臓の必要な部分を切り取る操作を進めます(図12)。

図12 ドナー手術 右葉摘出 左葉摘出
図12 ドナー手術

必要な場合には、手術台の上で、胆管に造影剤を入れてレントゲン撮影を行い、どこで胆管を切るかの判断を明確にします(図13)。

図13 術中胆道造影
図13 術中胆道造影

肝臓は、血液を含んだスポンジのような構造であり、そのまま切断すれば大量の出血があります。そこで、キューサーと言われる超音波で肝臓の組織を壊して吸い取る器械と、細かい血管や胆管を焼いて切る電気メスという器械を用いて出来るだけ出血が少ないように肝臓を切ります。もちろん、太い血管や胆管は糸で縫い閉じます。摘出する肝臓の部位決定方法は後述します。

 肝臓が摘出されると、その血管(門脈)の中に管を入れて肝臓の中に保存液という特殊な液体を流します。移植予定の肝臓の重さを量り血管のチェックを行って、レシピエントの準備ができるまで保存液中で冷やされて保存されます(図14)。この保存液の中では、肝臓は、約12時間程度は十分にその働きを保って保存できます。肝臓を摘出された後、出血や胆汁の漏れが無いか細かくチェックして閉腹します。

図14 ドナーから摘出後冷却保存される移植用肝臓
図14 ドナーから摘出後冷却保存される移植用肝臓

 ドナーの手術時間は、切除の部分の大きさで少し違いますが、7〜10時間程度です。

 手術が終了すると、手術室で麻酔から覚め、意識がある状態で(ぼんやりはしていますが)、病棟へ戻ります。

 術後2-5日程度、手術に伴う痛み、身の置き所の無い不快感、むかつき、熱、などが続きます。数日後から水分、ついで食事が順次始まりますが、当初はなかなかのどを通らないことも少なくありません。硬膜外麻酔の薬剤注入チューブは、4-5日間程度入れておいた後、抜きます。摘出される(提供する)肝臓の大きさにもよりますが、ドナーは合併症が生じなければ手術後2~3週間程度で退院が可能となります。

ページの先頭へ戻る