熊本大学大学院生命科学研究部 乳腺・内分泌外科 講座 患者さま・一般の皆様へ 医療者・医学生の皆様へ

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HER2陽性乳癌におけるPI3K経路活性化の臨床学的意義


はじめに

PI3K/Akt経路は、細胞の増殖・生存を制御する主要なシグナル伝達経路ですが、多くの癌でこの経路の異常が認められています。乳癌においては、様々な薬剤の治療抵抗性の一因として、PI3K経路活性化が示唆されており、特にHER2陽性乳癌においてトラスツズマブ治療耐性との関与が示唆されています。

対象

本研究は、2004年~2012年の期間に当科にて術前トラスツズマブ治療を行った後、手術を施行されたHER2陽性乳癌患者様43名を対象とさせて頂きました。

研究内容及び結果

治療前の組織を用いて、PI3K経路活性化因子(PIK3CA遺伝子変異/増幅、PTEN, pAkt、INPP4B蛋白発現など: 図1)と治療効果(病理学的完全寛解:pCR)との関連について調べました。PIK3CA遺伝子変異またはPTEN発現低下のある症例では、有意にpCR率が低い結果でした(図2)。

医学上の貢献

PI3K経路の活性化が、術前トラスツズマブの治療効果に影響を与えることが示唆されました。トラスツズマブ抵抗性に関する機序の解明につながる結果であると考えます。

図1. PI3K経路活性化に関する因子
図2. PI3K経路活性化とpCR率との関連

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