Kumamoto University Integrated Score
~熊本の患者さんが作る予後予測式~
はじめに
ホルモン受容体陽性/Her2陰性(ルミナルとよばれます)、乳癌の治療選択では、ホルモン療法のみか、化学療法を追加するかで悩む場面が多いです。最近はOncotype DX™などの検査をすれば方針の助けになるようにはなりましたが、海外で開発された高価な検査であるため、より使いやすい、日本人により適したマーカーがあった方がよいと考えられます。そのうえ、Oncotype DX™などの遺伝子発現のみを調べるツールには、腫瘍の大きさやリンパ節転移の状況などのデータは反映されていません。そこで臨床病理学的因子に加え遺伝子発現を含む包括的予後予測スコアを作ることに挑戦しました。
対象
本研究は、2004年から2008年に当院にて乳癌の治療を受けられた患者様の乳癌組織を使用しています。
研究内容及び結果
月経、腫瘍径、リンパ節転移個数、核グレードといった臨床的な因子と、乳癌と診断されたら必ず検査されるER, PgR, Her2, Ki67の染色所見を合わせて、再発予測スコアである臨床スコア(CS)を算出しました。また、35遺伝子から選ばれた6遺伝子(BIRC5、CCNB1、CCNE1、MET、VEGF、ERBB3)をCSに合わせることで、Kumamoto University Intregrated Score(Ku-IS)を算出しました。結果的には、ほとんどの予後予測はCSのみで可能であることがわかり、ルミナル乳癌の方のうち多くとも約2割程度の方にが遺伝子検査が有効である可能性が示されました。Ku-ISは熊本市民病院や熊本赤十字病院の患者様の検体においても正確さが確認されました。
医学上の貢献
Ku-ISのコンセプトを用いれば、従来の臨床病理学的因子や染色の情報を有効活用できます。また、遺伝子発現による詳細なホルモン反応性評価が必要かどうかの絞り込みができると考えられます。
研究対象者の方へ
本研究の実施過程及び、学会や論文等で結果を公表する際に、患者様を特定できる情報は一切含まれておりません。