熊本大学大学院生命科学研究部 乳腺・内分泌外科 講座 患者さま・一般の皆様へ 医療者・医学生の皆様へ

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特色ある診療 ~センチネルリンパ節生検~


センチネルリンパ節生検について

Ⅰ.「センチネルリンパ節生検による腋窩リンパ節郭清省略」理論について

原発性乳癌における「センチネルリンパ節生検による腋窩リンパ節郭清省略」理論は、乳房内にできた"がん"細胞が近くのリンパ管へ進入したあと、最初に 流れ着いた乳房周囲のリンパ節を「センチネルリンパ節(見張りリンパ節)」と呼び、このリンパ節に"がん"がいなければ、その先のリンパ節には"がん"は いないと判断して、通常の腋窩リンパ節の切除(腋窩リンパ節郭清)はしないという理論です。

Ⅱ.センチネルリンパ節生検が行われるようになった背景

"がん"が腋窩リンパ節まで転移をしている方は当然それを放置して残しておくことは良いことではありません。しかし、転移のない方にまで、腋窩リンパ節 郭清を行うことが必要かどうかは議論の分かれるところです。これは、腋窩リンパ節郭清による合併症(患肢の浮腫、上腕内側のしびれや痛み) が少なからず起きるのも事実だからです。生命にかかわる合併症ではありませんが、今後の長い人生を考えたとき、患者さんにとっては非常に厄介なことです。このような背景のもとに、近年、センチネルリンパ節生検による腋窩リンパ節郭清省略の動きがでてきました。

Ⅲ.センチネルリンパ節生検の実際

センチネルリンパ節を見つけるために、手術の前に「ラジオ・アイソトープ(RI)」を乳房に注射をしてこれを目印に見つけます。通常ラジオ・アイソトープは手術前日に注射をします。注射をするアイソトープの量は骨の転移診断のための骨シンチと呼ばれる検査で使用される放射線量の約50-100分の1で、患者さんへの被爆の影響はありません。

Ⅳ.センチネルリンパ節生検の成績

主に同定率(センチネルリンパ節を発見できる確率)と正診率(センチネルリンパ節に"がん"がいなければ他の腋窩のリンパ節にも"がん"がいない確率)で判断します。

本院の同定率は99.7%です。339人のうち338人はセンチネルリンパ節を見つけることが可能でした。希ながらセンチネルリンパ節が見つからないこともあります。

センチネルリンパ節生検で評価した腋窩リンパ節転移の診断がどのくらい正確かの指標になります。本院の正診率は96%です。100%ではないので、センチネルリンパ節に"がん"がいないと判断をして通常の腋窩リンパ節郭清を行わなかった方の中でごく少数の方に腋窩のリンパ節に"がん"が遺残することになります。当然このような方では後日(数ヶ月から数年先)腋のリンパ節が腫大してくることになると思います。そのときには再度切除をおこなう必要があります。

Ⅴ.適応と考えられる患者
術前診断で腋窩リンパ節転移がないと予想される方が大前提で、かつ、
  1. 比較的腫瘍が小さい方(2cm以下が目安)
  2. 手術前に乳房やリンパ節の生検などをされていない方
  3. 術前の化学療法が行われていない方
が望ましいですが、本院ではこれまでの経験から、さまざまな状況の患者さんにできる限り対応しております。

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