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研修だより

「初期臨床研修の二年間を振り返って」

熊本大学医学部附属病院初期研修医Cプログラム
田嶋 祐香

 〈はじめに 初期臨床研修の概要〉
 平成二十九年四月に初期臨床研修が始まった日を思い起こすと、あっという間の二年間であったなと実感します。この度二年間を振り返る機会をいただきまして、大変光栄に思います。拙い文章ではございますが、熊本大学医学部附属病院(熊大病院)初期臨床研修医として、私の過ごした二年間をご紹介させていただきます。

 まず、私自身の話に先立って、平成十六年度から始まり、平成二十二年度に改定された現行の初期臨床研修の概要を簡単にご紹介します。各研修基幹病院によって詳細は異なりますが、概ね左記のような仕組みであると認識しています。

@ 内科六か月、救急三か月、選択必修三か月(外科、産婦人科、小児科、麻酔科、精神科のうち二診療科以上選択)、地域研修一か月、選択研修十一か月
A 研修の自己評価、指導医からの評価および経験必須症例のレポート提出
B アルバイトの禁止(臨床研修に専念)
C 年次有給休暇、出勤停止、忌引き、欠勤すべて含めて三か月以内であれば二年間で初期臨床研修終了可能

 そして熊大病院の初期臨床研修は複数のコースに分かれており、連携病院での研修も一定期間行います。マッチング枠はコースごとに分かれており、コースが決定してから連携病院の希望を熊大病院に提出し、研修先科連携病院が決定します。

Aコース:一年間熊大病院→一年間連携病院
Bコース:半年間熊大病院→一年間連携病院→半年間熊大病院
Cコース:一年間連携病院→一年間熊大病院
Dコース:二年間熊大病院
※救急研修、地域研修でも連携病院での研修あり
※小児科・産婦人科特化コース、総合診療・地域医療特化コースあり

 私はこのうちCコースに所属し、熊大病院に加えて宮崎県立延岡病院(県延病院)で一年間、社会保険大牟田天領病院(天領病院)で一か月間研修を行いました。二年間の研修スケジュールを月表にまとめ、各病院での研修内容について簡単にご紹介します。

平成29年度 宮崎県立延岡病院
4月 呼吸器内科  
5月 消化器内科  
6月 腎臓内科  
7月 小児科  
8月・9月 産婦人科 産婦人科サマースクール
10月・11月 救急研修(救急科)  
12月 救急研修(麻酔科)  
1月 血液内科  
2月・3月 循環器内科 院内学会
平成30年度 熊本大学医学部附属病院
4月 病理診断科  
5月 緩和ケア(麻酔科)  
6月 産婦人科  
7月 地域研修(天領病院)  
8月・9月 精神科 病理学校
10月 法医学 法医学九州地方部会
11月・1月 呼吸器内科 新専門医制度一次募集締め切り
2月 画像診断科  
3月 呼吸器内科  


〈県延病院 研修の特色〉
 私はCコースとしてまず一年目に県延病院で、必修の内科六か月、救急三か月と選択必修の小児科一か月、産婦人科二か月の研修を行いました。県延病院は熊大病院または宮崎大学医学部附属病院(宮大病院)からの医局派遣で勤務している先生方が多く、研修医も基幹型、熊大病院、宮大病院など所属も出身大学も様々です。宮大病院の研修プログラムは、救急研修三か月に加えて、一か月単位で関連病院の希望の科を選択できるようになっているため、月ごとにメンバーが変わることもあり、多くの研修医と知り合うことができました。平成三十年度からは済生会熊本病院の研修医も三か月単位で県延病院の産婦人科や小児科研修を選択できるようになったということであり、さらに多彩なメンバーでの研修となるでしょう。

〈県延病院 救急当直〉
 県延病院では平日日中の業務に加えて、救急当直があります。内科当直・外科当直の先生方と研修医で当直にあたり、上級医の先生のご指導下に救急車対応やウォークイン症例の診察を行います。私が連携病院として県延病院を選んだ一番の理由がこの救急当直でした。県延病院は宮崎県北部で唯一の二十四時間三百六十五日救急患者受け入れ態勢にある中枢病院であり、小児科・周産期も含め様々な症例を経験することができる環境です。また、救急当直を通して各科の先生方とすぐに顔見知りになるため、日中の業務でも科の垣根を越えて気軽に相談することができ、先生方の顔と名前も二か月かからずにみなさん覚えることができました。
 また一緒に当直に入る外来看護師の方々からも大変多くのことをご指導いただきました。点滴ルートの取り方、採血分注の注意点、ストレッチャーやモニター機器の扱い方など、医療スタッフとして身につけるべき基本的なことは救急当直で看護師の方々から教わることで身につけることができました。
 一睡もできない夜も少なからずあり、決して楽しいばかりの救急当直ではありませんでしたが、充実した、貴重な成長の機会となったことを実感できました。

〈県延病院 off the job training〉
 業務以外の学びの場として、研修医セミナー(月二回)や院内学会(年二回)、抄読会や医局会での講義なども充実していました。研修医セミナーで扱われた内容がその日の当直ですぐに役立つということもあり、活きた知識としてそのまま実践につながる時間でした。
 また、院内学会は研修医発表必須であり、しかも一症例報告ではなく、データを収集して統計学的検討を行うことが求められます。指導医の先生と二人三脚でデータ収集、統計処理、スライド作成、発表練習を行い、無事二回の学会発表を終えることができました。また一回目の院内学会は、同時期に宮崎県産婦人科地方部会もあり、そちらでも改変した内容で発表の機会をいただきました。表題のみご紹介いたします。

【前置胎盤症例における臨床的検討】
 平成二十九年九月 院内学会
【前置胎盤症例の出血に関連する臨床的検討】
 平成二十九年九月 宮崎県産婦人科地方部会
【当院における上部消化管出血の臨床的検討】
 平成三十年三月 院内学会

〈熊大病院 選択研修〉
 二年目、熊大病院では地域医療研修を除いてすべて選択研修ということで、大学病院だからこそ選択できる研修をと思い、病理室や緩和ケア、法医学などを選択しました。特に法医学を初期研修に取り入れている病院は大学病院としても限られているということで、非常に貴重な経験でした。ご遺体のエピソード、身体所見から、マクロの臓器所見、ミクロ所見の評価が必要で、全身・全臓器についての理解を再確認する機会となりました。また医療系に限らない多職種の方と議論を交わす機会も多くあり、そういった意味でも貴重な研修となりました。

〈天領病院 地域医療〉
 天領病院は地域医療という言葉が持つイメージよりは比較的規模の大きな病院です。周囲には大型ショッピングモールもあり、離島医療や山村の医療を担うような診療所での研修とは趣の異なる研修であったかもしれませんが、私にとっては最も充実した一か月でした。まず初日に院長先生から言われたことは、「内科所属だけど、研修内容は自由だから、好きなことをしなさい」でした。はじめの数日はどう過ごしていいかわからない時間もありましたが、有難い機会だと思い、兼ねてから自信のなかった採血と心エコー、大好きな顕微鏡を勉強すべく、外来採血室と超音波検査室、病理室と細菌検査室に出入りしてご指導を賜りました。自分自身で研修スケジュールを組み立てるというのは、面白い経験でした。

〈熊大病院 研修環境〉
 熊大病院に二年目で戻ってくると、様々な連携病院から戻ってきた同期が多くいて、また他の基幹病院から大学病院研修として一定期間熊大病院に所属する研修医もいるので、様々な病院の研修について情報交換ができる環境でした。お互いの経験してきた研修を共有することで、視野が広がり、刺激しあえたのではないかと思います。
 また熊大病院の診療科選択は非常に自由度が高く、まず一年間の希望研修先を提出しますが、その後一か月以上前であれば変更希望に対応してくださいます。もし一か月を過ぎても、自身で変更前後の科に交渉すれば、変更が可能な場合が多いです。受け入れをしてくださる診療科の先生方には大変ご迷惑な仕組みだとは承知の上で、非常に有難い仕組みで、私も平成三十年度八月以降は初期の選択科から変更して組みなおしました。直前の変更や複数回の変更にも対応してくださる研修センターの方々や快く受け入れてくださる診療科の先生方には頭があがりません。この仕組みは三年目の進路選択について熟慮することにも寄与しており、今後の研修医のためにもこの柔軟な仕組みが継続されるといいなと思います。

〈おわりに 初期臨床研修改定について〉
 二〇二〇年度(新年号二年度)の初期臨床研修から改定に伴い、必修科目の見直しが行われ、次のようになるそうです。

●改定前:月単位
 内科六か月、救急三か月、選択必修三か月(外科、産婦人科、小児科、麻酔科、精神科のうち二診療科以上選択)、地域研修一か月、選択研修十一か月

●改定後:週単位
 内科二十四週、救急十二週(うち四週まで麻酔科可)、外科四週、小児科四週、産婦人科四週、精神科四週、地域医療四週、選択科目四十八週
※このうち一般外来四週以上を含む(救急外来や精神科など特殊外来は含まない)
※地域医療研修病院はへき地・離島の医療機関・二百床未満の病院、診療所を選択する

 右記のように、選択必修科目が必修科目に復帰し、一般外来経験の必修化などが盛り込まれ、新基準に当てはめてみると、私の場合は外科、一般外来、地域医療(天領病院は二百床以上のようです)が基準を満たさないことになるわけですが、その三点はちょうど同期研修医と比較して、自分に不足する経験であると認識していたことでした。
 私にとって、一人ひとりの医師にとっては二年間という唯一の初期研修で、周囲と比較して一喜一憂するものではないと思っていますが、それぞれの研修の良かった点や改善すべき点が集計され、繰り返し見直し改定が行われ、よりよい初期研修制度が維持されていくことは日本の医療の基礎として非常に重要なことだと感じました。

 今回、「熊杏」に執筆の機会をいただき、私自身の研修を振り返るとともに、初期研修制度についても改めて確認することができ、大変貴重な機会となりました。このような機会いただいたこと、大変光栄に存じます。また、この場をお借りして二年間の研修でご指導賜りました先生方、医療スタッフのみなさま、そして各病院で研修生活を支えてくださった初期研修担当のみなさまに心より御礼を申し上げます。

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