肝移植の手引き
4.ドナーの手術前の検査
手術は、レシピエントへ移植するためにドナーの肝臓の一部を切除するものです。ドナーは詳しい検診検査を経て、移植肝摘出のための手術を受けることになります(表3)。 ドナー自身が臓器提供のための手術によって大きな危険にさらされないことを確認することと、その肝臓がレシピエントに提供されて良好に働くことができるかどうか調べることが検査の目的です。これには、詳細な問診と診察だけでなく、貧血、心血管系の疾患、肝疾患、腎疾患、糖尿病などがないことを確認するための一連の検査が含まれます。
- 血液検査
貧血の有無、肝機能、腎機能、糖尿
高脂血症、肝炎などの感染の有無、
腫瘍マーカー、その他 - 心電図
- 胸部、腹部レントゲン検査
- 呼吸機能(肺活量)
- 腹部超音波検査
- 肝臓CT検査
(造影剤使用:肝臓の異常、血管の位置、肝臓の大きさ などをチェック) - 必要なかたには
内視鏡検査、頭部CT、心臓の超音波検査、なども。
肝生検も行うことがあります。
ドナーの肝臓が働きの上でも正常であり、明らかな肝臓外の問題もないと認められた場合、ドナーの肝臓がレシピエントにとって適当な大きさであること、レシピエントに必要な肝臓を提供した後に残る肝臓の大きさが妥当かどうか、移植手術をするのに必要な血管も特に差し支えないことを確認するためにCTスキャン、超音波検査が行われます。CTスキャンは、X線を用いた検査で、体の中の構造物を、2次元、3次元に構成してわかりやすく見せてくれる検査です(図8)。この検査を用いて、肝臓の大きさ、肝臓の血管などの走り方や枝分かれの仕方、肝臓自体の異常の有無等をみることが出来ます。ただし、造影剤という薬を注入しながら行う必要があり、それに対するアレルギー反応が起こることがありますので、それに関しての説明は個別にさせていただき、さらにCTのための問診票と同意書をいただく必要があります。特にアレルギー反応が無くても、造影剤は比較的急速に注入されますので、血管の痛みや、全身がほてったような感じが一時的にします。
CTや血液検査の結果、さらに肝生検が必要となる場合も有ります。肝生検は、細い針で肝臓を直接突いて細い組織片を採取し、これを顕微鏡で見る検査(病理検査)で、専門医が、脂肪肝などの病的な状態があるか、その程度がどうかを検査診断するものです。局所麻酔で行い、通常施行後数時間の安静を要しますので、一泊二日の入院で行われることが多いです。時に出血や痛みなどの合併症をきたすこともあり、原則として必要とされる方のみに行います。必要とされる方は、血液検査やCT、エコーから脂肪肝やその他の肝臓の異常が疑われる場合、あるいは、肝臓の大きさがレシピエントやドナーにとってぎりぎりで、できる限り正常であることを明確に確認したい場合、その他、遺伝的な病気が疑われる場合などで、個別に理由を説明いたします。
ドナーにとって必要な検査が終了した後、医師が全ての検査の結果を評価してご説明し、臓器提供が可能かどうかをお話します。その時点でドナーとなることをもう一度お考えいただき、またもし種々の疑問点などがありましたらご質問いただくように御願いしています。
図8 CTスキャン検査 |
---|