肝移植の手引き
6.生体肝移植手術と術後経過
(1)麻酔
手術には全身麻酔が必要になります。ドナーとレシピエントは、麻酔方法が異なります。
ドナーでは、硬膜外麻酔と全身麻酔を併せて行います。硬膜外麻酔(図10)は、手術直前に腰の背骨の間から細いチューブを入れて、背骨の中を通る神経を麻痺させ、痛みを感じにくくする方法です。このチューブは、術後4〜5日間入れておかれ、術後の痛み止めの助けとして使われます。この麻酔方法は腹部手術には一般的に行われる方法ですが、チューブの入り口の脊髄の周りに出血を起こして脚の神経麻痺を起こすことがあります。
図10 硬膜外麻酔 |
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また、術後の痛み止めとして自己調節鎮痛法(Patient Controlled Analgesia: PCA)と呼ばれる方法を併用しています。これは、患者さん自身が痛みのあるときにボタンを押すと一定量の鎮痛薬が、点滴から静脈の中に注入される痛み止めの方法で、ある程度患者さんの感じ方に即した鎮痛が可能になります。
レシピエントでは、出血しやすいこともあり、硬膜外麻酔は行わずに全身麻酔だけで手術が行われます。
なお、麻酔の詳細については、麻酔科医が手術の前に必ず診察をしますので、そのときに詳しく説明します。