患者様へ

肝移植の手引き

4.脳死肝移植手術早期の危険性と合併症

以下、脳死肝移植後想定される危険性を説明します。

(1)移植された肝臓が働かないこと(PNF:プライマリーノンファンクション)
 先に説明したごとく、脳死者からの肝移植では、手術自体は成功しても移植された肝臓が最初から全く機能しない事態が発生することがあります。その原因としては、もともとドナーの肝臓にある程度以上の脂肪肝などの異常があった、脳死に至る過程で血圧の低下など肝臓の血の巡りが悪くなるような状態があった、昇圧剤をたくさん使っていた、ドナーの体の電解質バランスが大きく変動していた、などがあり得ますが、原因が必ずしも明らかでない場合もあります。はっきり危険因子が明らかなら、その肝臓を用いることを避けるわけですが、完全に予知できない場合もあり、また、多少のリスクがあっても、レシピエントの状態から相対的には次の機会を待つより移植をした方がよい、と判断することもあります。もし、このPNFが起これば、再度移植をしないかぎりレシピエントは亡くなってしまうことになりますが、再度脳死ドナーから移植をうけることは現在の日本の臓器提供数から考えるとかなり困難なことであり、緊急に生体肝移植を考える、ということもあり得ます。

 (2)その他は、出血、血管の狭窄や血栓、感染症、胆管の合併症など、生体肝移植の合併症と同様であります。

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