小腸移植の手引き
生体小腸移植と脳死小腸移植のちがい
脳死小腸移植と生体小腸移植はそれぞれ、利点欠点がありますが、世界の大勢は脳死小腸移植です。生体小腸移植の最大の問題は、生きた方から手術によって部分的に小腸を切り取って移植に用いなければならないことです。すなわち、小腸を提供して下さる方(生体ドナー)が必ず必要であり、そのかたの安全性への問題、負担、というものが必ず出てくるということです。また、頂く小腸(小腸グラフト)の長さが限られる点、小腸にある血管(動脈、静脈)の繋ぎ目が細く、短いため、時には別の血管(血管グラフト)を取ってきて用いないといけない点などがあげられます。
一方、生体小腸移植の利点は、頂く方の健康状態など十分準備して手術の日程をあらかじめ決めることができる、検査も十分行って、提供する方(ドナー)や提供を受ける方(レシピエント)の手術を行う上での問題点をできるだけ少なくすることができるという点です。また、隣りあった手術室にて同時に手術を進めることにより、頂く小腸(グラフト)を取り出してから、レシピエントの体の中に入り血管を繋ぐ手術までの時間を短時間に調節できる点などから、頂く小腸の機能を良好に保つことができることです。
脳死小腸移植では、脳死になられた方の小腸の全てを頂くことができるのが長所でありますが、遠方で脳死ドナーが出た場合、小腸を取り出して搬送するのに時間がかかるという点、ドナーがいつ現れるかわからない、どれくらい待てばいいのか不明ということ、そしてドナーが突然出現するために手術はいつ行われるか分からない点が短所となります。