小腸移植の手引き
脳死小腸移植の登録から移植までの手順
脳死小腸移植の登録から移植実施までの概略を説明します。
現在の脳死小腸移植の認可をうけている施設は、九州大学、大阪大学、京都大学、名古屋大学、慶應大学、新潟大学、東北大学、北海道大学、岡山大学、旭川医科大学、自治医科大学、国立成育医療センターと熊本大学の13施設です。
登録まで
まず、脳死小腸移植を行いたいと思う施設で外来を受診し、説明を受け登録を希望される場合は、登録に必要な検査を受けます。この検査データを、それまでの病気の経過情報とともに、受診した施設から「脳死小腸移植適応評価委員会」というところに送って、実際に移植が出来るかどうか、すなわち、小腸移植が治療として妥当かどうか、またどれくらい急ぐのか、について全国一律基準による評価を受けます。急ぐ順に、Status 1, Status 2, Status 3という点数がつけられて評価委員会から返事が受診した移植施設にもどってきます。その情報を、今度は、日本臓器移植ネットワーク、という、国内で唯一の脳死移植斡旋機関に受診した施設より送ります。そこでは、患者様からの「登録料」が振り込まれるのを待って、コンピューターに記録され、登録が完了します。その後、約3ヶ月毎に登録した施設に来て頂き、体の状態を診て行きます。その際に体の状態が変わっていた場合は再度評価をし直してもらい、点数の変更を受けて登録の更新を行うことがあります。脳死ドナーが出るまで、自宅で待機したり、また体の状態によっては入院治療を必要とする場合があります。体の状態が脳死ドナーを待てない状況になった場合は、生体小腸移植を次善の策として行うこともあり得ます。
ドナーが出た時
全国どこかで脳死ドナーが出た場合、その情報は直ちに日本臓器移植ネットワークに伝えられ、各臓器をどこで待っているどなたに提供するか、あらかじめ決められたルールに従って順番が自動的につけられ、その該当患者様が待っている施設に連絡がきます。一度に連絡するのはまず上位2名までになっていて、もしその上位のかたが、「今回は移植を受けない」と断られた場合には、順に優先順位が次のかたに連絡が行くことになっています。
連絡を受けた移植施設の担当者は、「あなたが今回のドナーから小腸をいただけることになりましたが、実際に移植をうけられますか」という質問を、通常、電話で患者様や御家族にお伺いすることになります。これは24時間の間にいつ起こるかわかりません。真夜中や、勤務中、いろいろな場合があるでしょう。よって、いつでも連絡がつくようにあなたの緊急連絡先は詳しくお聞きしておくことが必要です。
上記の質問に対しては、速やか(約1時間以内)にお答えをいただかなくてはなりません。なぜなら、もしお断りになれば、待っている順番が次の方にすぐ連絡しないといけないからです。お断りになられたからと言って、次のときに順番が遅くなるなどの不利益を被ることはありません。ただ、何度も連絡が行ってその都度断る、ということが続けば、移植を受ける意思を再度相談させていただくことはあります。
もし移植をうける、ということを決められた場合には、担当者の指示に従って速やかに熊大病院に入院していただくことになります。
入院から移植をうけるまで
入院後は脳死小腸移植を直前にして、再度、その内容について説明をくり返し、最終的に考えていただく時間を作ります。そのときには、すでに電話で概略はお伝えしていると思いますが、ドナーの体の状態、小腸の状態などの情報も判明している範囲でお伝えします。ドナーの個人的な情報はお伝えできない部分があります。この間に、すでに熊大病院から、そのドナーがおられる病院に臓器をいただきに向かっており、出来るだけ早く戻ってきて手術に取りかかれるようになっています。