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卒後研修プログラム

2021年度 熊本大学病院群

卒後臨床研修プログラム

 

Ⅱ 臨床研修の目標、方略及び評価

1 臨床研修の基本理念

 臨床研修は、医師が、医師としての人格をかん養し、将来専門とする分野にかかわらず、医学及び医療の果たすべき社会的役割を認識しつつ、一般的な診療において頻繁に関わる負傷又は疾病に適切に対応できるよう、基本的な診療能力を身に付けることのできるものでなければならない。

2 到達目標

 医師は、病める人の尊厳を守り、医療の提供と公衆衛生の向上に寄与する職業の重大性を深く認識し、医師としての基本的価値観(プロフェッショナリズム)及び医師としての使命の遂行に必要な資質・能力を身に付けなくてはならない。医師としての基盤形成の段階にある研修医は、基本的価値観を自らのものとし、基本的診療業務ができるレベルの資質・能力を修得する。

A.医師としての基本的価値観(プロフェッショナリズム)
  1. 1.社会的使命と公衆衛生への寄与
  2.  社会的使命を自覚し、説明責任を果たしつつ、限りある資源や社会の変遷に配慮した公正な医療の提供及び公衆衛生の向上に努める。
  3. 2.利他的な態度
  4.  患者の苦痛や不安の軽減と福利の向上を最優先し、患者の価値観や自己決定権を尊重する。
  5. 3.人間性の尊重
  6.  患者や家族の多様な価値観、感情、知識に配慮し、尊敬の念と思いやりの心を持って接する。
  7. 4.自らを高める姿勢
  8.  自らの言動及び医療の内容を省察し、常に資質・能力の向上に努める。
B. 資質・能力

1.医学・医療における倫理性
 診療、研究、教育に関する倫理的な問題を認識し、適切に行動する。

  1. ① 人間の尊厳を守り、生命の不可侵性を尊重する。
  2. ② 患者のプライバシーに配慮し、守秘義務を果たす。
  3. ③ 倫理的ジレンマを認識し、相互尊重に基づき対応する。
  4. ④ 利益相反を認識し、管理方針に準拠して対応する。
  5. ⑤ 診療、研究、教育の透明性を確保し、不正行為の防止に努める。

2.医学知識と問題対応能力
 最新の医学及び医療に関する知識を獲得し、自らが直面する診療上の問題について、科学的根拠に経験を加味して解決を図る。

  1. ① 頻度の高い症候について、適切な臨床推論のプロセスを経て、鑑別診断と初期対応を行う。
  2. ② 患者情報を収集し、最新の医学的知見に基づいて、患者の意向や生活の質に配慮した臨床決断を行う。
  3. ③ 保健・医療・福祉の各側面に配慮した診療計画を立案し、実行する。

3.診療技能と患者ケア
  臨床技能を磨き、患者の苦痛や不安、考え・意向に配慮した診療を行う。

  1. ① 患者の健康状態に関する情報を、心理・社会的側面を含めて、効果的かつ安全に収集する。
  2. ② 患者の状態に合わせた、最適な治療を安全に実施する。
  3. ③ 診療内容とその根拠に関する医療記録や文書を、適切かつ遅滞なく作成する。

4.コミュニケーション能力
 患者の心理・社会的背景を踏まえて、患者や家族と良好な関係性を築く。

  1. ① 適切な言葉遣い、礼儀正しい態度、身だしなみで患者や家族に接する。
  2. ② 患者や家族にとって必要な情報を整理し、分かりやすい言葉で説明して、患者の主体的な意思決定を支援する。
  3. ③ 患者や家族のニーズを身体・心理・社会的側面から把握する。

5.チーム医療の実践
 医療従事者をはじめ、患者や家族に関わる全ての人々の役割を理解し、連携を図る。

  1. ① 医療を提供する組織やチームの目的、チームの各構成員の役割を理解する。
  2. ② チームの各構成員と情報を共有し、連携を図る。

6.医療の質と安全の管理
  患者にとって良質かつ安全な医療を提供し、医療従事者の安全性にも配慮する。

  1. ① 医療の質と患者安全の重要性を理解し、それらの評価・改善に努める。
  2. ② 日常業務の一環として、報告・連絡・相談を実践する。
  3. ③ 医療事故等の予防と事後の対応を行う。
  4. ④ 医療従事者の健康管理(予防接種や針刺し事故への対応を含む。)を理解し、自らの健康管理に努める。

7.社会における医療の実践
  医療の持つ社会的側面の重要性を踏まえ、各種医療制度・システムを理解し、地域社会と国際社会に貢献する。

  1. ① 保健医療に関する法規・制度の目的と仕組みを理解する。
  2. ② 医療費の患者負担に配慮しつつ、健康保険、公費負担医療を適切に活用する。
  3. ③ 地域の健康問題やニーズを把握し、必要な対策を提案する。
  4. ④ 予防医療・保健・健康増進に努める。
  5. ⑤ 地域包括ケアシステムを理解し、その推進に貢献する。
  6. ⑥ 災害や感染症パンデミックなどの非日常的な医療需要に備える。

8.科学的探究
  医学及び医療における科学的アプローチを理解し、学術活動を通じて、医学及び医療の発展に寄与する。

  1. ① 医療上の疑問点を研究課題に変換する。
  2. ② 科学的研究方法を理解し、活用する。
  3. ③ 臨床研究や治験の意義を理解し、協力する。

9.生涯にわたって共に学ぶ姿勢
  医療の質の向上のために省察し、他の医師・医療者と共に研鑽しながら、後進の育成にも携わ り、生涯にわたって自律的に学び続ける。

  1. ① 急速に変化・発展する医学知識・技術の吸収に努める。
  2. ② 同僚、後輩、医師以外の医療職と互いに教え、学びあう。
  3. ③ 国内外の政策や医学及び医療の最新動向(薬剤耐性菌やゲノム医療等を含む。)を把握する。
C.基本的診療業務

コンサルテーションや医療連携が可能な状況下で、以下の各領域において、単独で診療ができる。

  1. 1.一般外来診療
  2.  頻度の高い症候・病態について、適切な臨床推論プロセスを経て診断・治療を行い、主な慢性疾患については継続診療ができる。
  3. 2.病棟診療
  4.  急性期の患者を含む入院患者について、入院診療計画を作成し、患者の一般的・全身的な診療とケアを行い、地域連携に配慮した退院調整ができる。
  5. 3.初期救急対応
  6.  緊急性の高い病態を有する患者の状態や緊急度を速やかに把握・診断し、必要時には応急処置や院内外の専門部門と連携ができる。
  7. 4.地域医療
  8.  地域医療の特性及び地域包括ケアの概念と枠組みを理解し、医療・介護・保健・福祉に関わる種々の施設や組織と連携できる。