3 実務研修の方略
※ 以下は臨床研修の原則となり、これに則り研修を行うことになるが、詳細については各診療科、協力研修施設等で決められた方略に基づき研修を行う。
臨床研修を行う分野・診療科
- ① 内科、外科、小児科、産婦人科、精神科、救急、地域医療を必修分野とする。また、一般外来での研修を含めること。
- ② 原則として、内科24週以上、救急12週以上、外科、小児科、産婦人科、精神科及び地域医療それぞれ4週以上の研修を行う。なお、外科、小児科、産婦人科、精神科及び地域医療については、8週以上の研修を行うことが望ましい。
- ③ 原則として、各分野は一定のまとまった期間に研修(ブロック研修)を行うことを基本とする。ただし、救急については、4週以上のまとまった期間に研修を行った上で、週1回の研修を通年で実施するなど特定の期間一定の頻度により行う研修(並行研修)を行うことも可能である。なお、特定の必修分野を研修中に、救急の並行研修を行う場合、その日数は当該特定の必修分野の研修期間に含めないこととする。
- ④ 内科については、入院患者の一般的・全身的な診療とケア、及び一般診療で頻繁に関わる症候や内科的疾患に対応するために、幅広い内科的疾患に対する診療を行う病棟研修を含むこと。
- ⑤ 外科については、一般診療において頻繁に関わる外科的疾患への対応、基本的な外科手技の習得、周術期の全身管理などに対応するために、幅広い外科的疾患に対する診療を行う病棟研修を含むこと。
- ⑥ 小児科については、小児の心理・社会的側面に配慮しつつ、新生児期から思春期までの各発達段階に応じた総合的な診療を行うために、幅広い小児科疾患に対する診療を行う病棟研修を含むこと。
- ⑦ 産婦人科については、妊娠・出産、産科疾患や婦人科疾患、思春期や更年期における医学的対応などを含む一般診療において頻繁に遭遇する女性の健康問題への対応等を習得するために、幅広い産婦人科領域に対する診療を行う病棟研修を含むこと。
- ⑧ 精神科については、精神保健・医療を必要とする患者とその家族に対して、全人的に対応するために、精神科専門外来又は精神科リエゾンチームでの研修を含むこと。なお、急性期入院患者の診療を行うことが望ましい。
- ⑨ 救急については、頻度の高い症候と疾患、緊急性の高い病態に対する初期救急対応の研修を含むこと。また、麻酔科における研修期間を、4週を上限として、救急の研修期間とすることができる。麻酔科を研修する場合には、気管挿管を含む気道管理及び呼吸管理、急性期の輸液・輸血療法、並びに血行動態管理法についての研修を含むこと。
- ⑩ 一般外来での研修については、ブロック研修又は並行研修により、4週以上の研修を行うこと。なお、受入状況に配慮しつつ、8週以上の研修を行うことが望ましい。また、症候・病態について適切な臨床推論プロセスを経て解決に導き、頻度の高い慢性疾患の継続診療を行うために、特定の症候や疾病に偏ることなく、原則として初診患者の診療及び慢性疾患患者の継続診療を含む研修を行うこと。例えば、総合診療、一般内科、一般外科、小児科、地域医療等における研修が想定され、特定の症候や疾病のみを診察する専門外来や、慢性疾患患者の継続診療を行わない救急外来、予防接種や健診・検診などの特定の診療のみを目的とした外来は含まれない。一般外来研修においては、他の必修分野等との同時研修を行うことも可能である。
- ⑪ 地域医療については、原則として、2年次に行うこと。また、へき地・離島の医療機関、許可病床数が200床未満の病院又は診療所を適宜選択して研修を行うこと。さらに研修内容としては以下に留意すること。
- 1)一般外来での研修と在宅医療の研修を含めること。ただし、地域医療以外で在宅医療の研修を行う場合に限り、必ずしも在宅医療の研修を行う必要はない。
- 2)病棟研修を行う場合は慢性期・回復期病棟での研修を含めること。
- 3)医療・介護・保健・福祉に係わる種々の施設や組織との連携を含む、地域包括ケアの実際について学ぶ機会を十分に含めること。
- ⑫ 選択研修として、保健・医療行政の研修を行う場合、研修施設としては、保健所、介護老人保健施設、社会福祉施設、赤十字社血液センター、検診・健診の実施施設、国際機関、行政機関、矯正施設、産業保健等が考えられる。
- ⑬ 全研修期間を通じて、感染対策(院内感染や性感染症等)、予防医療(予防接種等)、虐待への対応、社会復帰支援、緩和ケア、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)、臨床病理検討会(CPC)等、基本的な診療において必要な分野・領域等に関する研修を含むこと。また、診療領域・職種横断的なチーム(感染制御、緩和ケア、栄養サポート、認知症ケア、退院支援等)の活動に参加することや、児童・思春期精神科領域(発達障害等)、薬剤耐性菌、ゲノム医療等、社会的要請の強い分野・領域等に関する研修を含むことが望ましい。
4 経験目標
経験すべき症候
外来又は病棟において、下記の症候を呈する患者について、病歴、身体所見、簡単な検査所見に基づく臨床推論と、病態を考慮した初期対応を行う。
ショック、体重減少・るい痩、発疹、黄疸、発熱、もの忘れ、頭痛、めまい、意識障害・失神、けいれん発作、視力障害、胸痛、心停止、呼吸困難、吐血・喀血、下血・血便、嘔気・嘔吐、腹痛、便通異常(下痢・便秘)、熱傷・外傷、腰・背部痛、関節痛、運動麻痺・筋力低下、排尿障害(尿失禁・排尿困難)、興奮・せん妄、抑うつ、成長・発達の障害、妊娠・出産、終末期の症候(29症候)
経験すべき疾病・病態
外来又は病棟において、下記の疾病・病態を有する患者の診療にあたる。
脳血管障害、認知症、急性冠症候群、心不全、大動脈瘤、高血圧、肺癌、肺炎、急性上気道炎、気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、急性胃腸炎、胃癌、消化性潰瘍、肝炎・肝硬変、胆石症、大腸癌、腎盂腎炎、尿路結石、腎不全、高エネルギー外傷・骨折、糖尿病、脂質異常症、うつ病、統合失調症、依存症(ニコチン・アルコール・薬物・病的賭博)(26疾病・病態)
※ 経験すべき症候及び経験すべき疾病・病態の研修を行ったことの確認は、日常業務において作成する病歴要約に基づくこととし、病歴、身体所見、検査所見、アセスメント、プラン(診断、治療、教育)、考察等を含むこと。
5 到達目標の達成度評価
研修医が到達目標を達成しているかどうかは、各分野・診療科のローテーション終了時に、医師及び医師以外の医療職が別添の研修医評価票Ⅰ、Ⅱ、Ⅲを用いて評価し、評価票は研修管理委員会で保管する。医師以外の医療職には、看護師を含むことが望ましい。
上記評価の結果を踏まえて、少なくとも年2回、プログラム責任者・研修管理委員会委員が、研修医に対して形成的評価(フィードバック)を行う。
2年間の研修終了時に、研修管理委員会において、研修医評価票Ⅰ、Ⅱ、Ⅲを勘案して作成される「臨床研修の目標の達成度判定票」を用いて、到達目標の達成状況について評価する。
研修医評価票
- Ⅰ.「A. 医師としての基本的価値観(プロフェッショナリズム)」に関する評価
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- A-1.社会的使命と公衆衛生への寄与
- A-2.利他的な態度
- A-3.人間性の尊重
- A-4.自らを高める姿勢
- Ⅱ.「B. 資質・能力」に関する評価
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- B-1.医学・医療における倫理性
- B-2.医学知識と問題対応能力
- B-3.診療技能と患者ケア
- B-4.コミュニケーション能力
- B-5.チーム医療の実践
- B-6.医療の質と安全の管理
- B-7.社会における医療の実践
- B-8.科学的探究
- B-9.生涯にわたって共に学ぶ姿勢
- Ⅲ.「C. 基本的診療業務」に関する評価
- C-1.一般外来診療
- C-2.病棟診療
- C-3.初期救急対応
- C-4.地域医療